2016/12/08
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「歌ってみた」を投稿する手順と注意点

本書では、いわゆる「歌ってみた」をやってみたい歌い手志望の人に、どうやったら 歌ってみたを投稿できるのかを、順を追って簡単に示す。

「歌ってみた」は、自分が歌ったアカペラボーカル、カラオケ音源、動画を 組み合わせて投稿したものだ(と定義しておく)。組合せりゃいいんだろ、簡単簡単! と思ってる人は、ぜひ自分で全部やってみて、その低品質っぷりにガクゼンとするが よいわ! 必要な作業はヤケに奥が深いので、一人で全部やっちゃうにはかなりの知識と 前準備とお金が必要になるのだよ。だもんで、多くの場合は必然的に誰かに 依頼することになる。そのときの注意点もあわせて述べる。

歌ってみたを作る作業は、大まかに以下に分割できる。

  1. ボーカルをアカペラ録音
  2. off vocal音源を用意する  
  3. カラオケ音源(以下オケ)とボーカルをMIX
  4. マスタリング
  5. できた音源を、動画と組み合わせてエンコードし、動画ファイル作成
  6. アップロード
  7. おまけ

以下、それぞれを依頼する場合の手順を書く。

ボーカルをアカペラ録音

まずは、ボーカルをアカペラ(伴奏なし)で録音した音源ファイルが必要だ。 作成する音源ファイルの条件は以下のとおり。

それぞれ見ていこう。

●可能な限りノイズが少ないこと

ノイズの有無は最終的な品質に直結するため、ノイズが少ないことは当然。 なのに、案外守れていないように思う。 経験から言えば、歌ってみた初心者ほどノイズに寛容な傾向があるように感じる。 MIXのために送られてきたデータに、「ブーン」というハムノイズや 「サー」というヒスノイズがもりもり乗ってて、正直ボーカル聞こえないんですけど みたいなことすら少なくない。これでいいと思ってるのかねキミタチ。

確かに、AudacityやiZotope RX5、WAVES Z-Noizeなどを使えば、ある程度ノイズは 除去できる。しかし、ノイズ除去すると必ずボーカルの音質は下がる。 ヘンなワウワウが出てきたり、声が細くなったり。だから、ノイズは 極力最初からないほうがいい。

高音質な録音のために必要なのは、いいマイク、オーディオインターフェース、 録音時の無音環境だ。マイクとオーディオインターフェースについては、 以下のような順番で音質が大きく上がっていく。 ノイズだけではなく、音域も広くなり、下に向かうに従い、より豊かな表現を そのまま録音できるようになる。携帯録音している人には、おそらく想像も つかないくらい違う。ぜひ一度真っ当な環境で録音したものを聞いてほしい。

<低音質>

携帯電話の内蔵マイク

ダイナミックマイク+PC内蔵オーディオ

(超えられない壁)

ダイナミックマイク+オーディオインターフェース

(超えられない壁)

コンデンサマイク+オーディオインターフェース

<高音質>

MIX師から携帯電話録音が嫌われ、コンデンサマイクがもてはやされるのには、 こういう明確な理由がある。最低でもダイナミックマイク+オーディオインターフェースはそろえてほしい。それぞれ3000円、10000円程度で十分入手できる。

ノイズを減らすために防音室(100万円〜)を購入したりする必要はないが、 「四方に吸音用の布団を幾重にも貼り付けた押入れに篭る」くらいの手間は してほしいところ。マイクの周囲に吸音材を張り巡らせるだけでも随分違う。

街のスタジオに行って録音するという手もある。案外気軽に借りれるので、近くのスタジオを調べてみるとよい。小さなスタジオなら、一時間5000円程度でエンジニアつき、防音環境+そこそこいいコンデンサマイクで録音させてくれたりする。一曲録音なら、 数テイク録っても一時間もあれば十分だろうし、その程度の金額は かけてもいいかもしれない。

そして重要な注意事項。ノイズ乗ったからー、といって歌い手の人(≒素人さん)が 自分でボーカル音源のノイズ除去をしてはいけない。 しちゃうと、ボーカルのおいしい成分まで削っちゃうことが多い。 だから、もしどうしてもノイズが乗っちゃうなら、除去はしないで次の工程の 作業者にお任せした方がよい。そんなこたないぜ!というノイズ除去技術に自信を 持ってる人なら別だが、実際には「オケ(伴奏)と合わせた時にギリギリ聞こえない くらいのノイズを許容する」作業はここではできないから、やっぱりやめた方が いいと思うなぁ。

●ボーカル音量が大きすぎない・小さくすぎないこと

音量の目安は、最大値で〜-5db 程度を目指すこと。その上で、抑揚があって小さい 部分があるのは構わない。

あまり小さすぎると、後の処理で音量を上げた時に、本来なら小さく て聞こえなかったはずのノイズが相対的に目立つようになってしまう。 一方、あまりに大きすぎると、後の処理で容易にクリップ(音割れ)してしまう。 クリップは、0dbに接触すると必ず起こる。ので、曲全体でボーカル単体が0dbに 届かない音量になるよう録音すること。

大事なのは、録音時に無加工で目標音量で録音すること。 そのために、マイクとの距離や声量を、事前に把握しておく必要がある。 そして覚えておいてほしいことは、 歌った人が、事後にお手軽にツールを使って音を大きくしてはいけないこと。 安易にツールを利用して編集すると、音質は大きく落ちるし、量子化ノイズが ばりばり乗ることにもつながる。 録音したら、録音したままの音量で提供すべき。もし大きすぎて/小さすぎて、 でももうリテイクできないのであれば、それはそれでその旨次工程の作業者に 知らせれば、その人ががんばってなんとかしようと努力するだろうしさ (※どうしようもないこともある)。

注意点は、録音機材の調整によっては、「バリッバリにクリップ(音割れ)してるけど 最大音量は -5db」のような音源が録音できうること。これは複数の機器を接続 したとき(たとえばマイクとオーディオインターフェースとPC)に起こる。 前段階(例:マイク)で録音時にクリップした音を、後段階(例:オーディオインター フェースやPC)でボリュームを絞ったことにより、見かけ上音量が小さくなったためだ。 割れた音は、その後音量を小さくしても、絶対元に戻らない。だから、 割れた音源もらっちゃうと音質悪い結果になること確定のため、後工程の作業者の モチベーションは著しく下がる。というかそこで「割れた音源なんか処理できるか!」 と断っちゃう人も少なくない。だから、割れには十分注意すること。

●16bit/44.1kHz以上の、無圧縮wavファイルであること

ビット数・周波数はこれ以上であればあまり問わない。ボーカルならこれ以上の 品質は要らんだろうとは思う。

絶対避けなければならないのは、mp3などの不可逆の圧縮音源にしてしまうこと。 圧縮音源がなぜ圧縮できるのかというと、人間の耳に影響が小さい部分を ごっそり削るからだ。 影響が「ない」わけではなく「小さい」部分が削られているということは、少しは 影響があるということで、実際、mp3で提供されたボーカルにエフェクトをかけようと すると、ものスゴノイズが目立つようになるとかザラザラするとか、 悪影響がもりもり出てくる。だから、絶対に音源を不可逆圧縮してはいけない。

●特別な事情がない限り、モノラルであること

ボーカルは基本的にモノラルで提供してもらう。そのほうが扱いやすいし、普通は 中央から鳴らすからステレオである意味がないため。もしステレオにしなければ ならない事情があるなら、それを後工程の作業者に伝えてほしい。 単に左右パンの指定をしたいだけなら、ステレオで提供するんじゃなくて、 「こことここはこのくらい左にパンしてくれ」のように指示してもらったほうがいい。 「音が細くなるから」という理由であれば、それはMIX段階でなんとでもできるので、 それも伝えたほうがいい。

後工程の作業面からいえば、ステレオデータはモノラルデータの倍処理が重いんで、 PCの処理能力的な意味でもモノラルだと助かるのであるよ。

例によって、どうしてもモノラルデータにできないなら、「録音はステレオだけど モノラルに変換して使ってください」と後工程の人に伝えればよい。

●ハモリや輪唱など、声が重なる部分はファイルを分け、1ファイル中では単一ボーカルであること

ひとつの音源ファイルの中で複数ボーカルが重なっていると、ピッチ・タイミング 調整できなくなってしまう。ピッチ・タイミング調整は「ひとつづつの」ボーカルに 注目して行うので、ちょっと考えればわかるように、ボーカルが複数重なった 状態では手も足も出ないのだ。 Melodyneには複数ボーカルを別々の音として認識するアツい機能があるが、 試してみるとやっぱりイマイチで、 どうしてもヘンに認識したり複数に認識できなかったりする。 だもんで、提供するファイルはひとつのファイル中でボーカルが重なっていないことを 保証すること。

なお、どの程度ファイルが分割されていてもいいかはMIX作業者による。 我輩は10くらいまでなら別に文句も言わず対応するが、20超えるとさすがに キツくなってくる。ので、可能な限りファイル数は少なくしてほしい。

●複数ファイルになる場合は、録音レベルやノイズ状態が同一になるようにすること

複数ファイルで提供される場合に多いのだが、各ファイルで録音レベルやノイズ 状態がバラバラなことがある。そうすると、統一的に処理できず、ファイル ひとつひとつにそれぞれ最適なノイズ除去や音量設定が必要になってタイヘン めんどくさいので、なるべく同一になるように努力してほしい。 「日を分けて複数テイクを録音する」のではなく、一気に録音するようにすると、 この傾向は弱くなる。

何度も書くが、 だからといって、歌い手が、録音後に自分で録音レベル調整やノイズ除去をしようとか 思わないこと!下手につつかれた音源は、ヘンなノイズ乗ってたり品質がさらに バラバラになってたりするので、録音したら録音したままを提供してくれたまえよ!

同じ理由で、複数テイクしたなら、歌い手側でファイルを統合したりせず、ばらばらに 送ってもらった方がいい。そのほうが歌い手の作業量も減るしね。

●後のノイズ除去作業のため、無音部のノイズ残すこと

無音部のノイズを除去されているボーカル音源が提供されることがある。 それ自体は別にいいんだが、問題は、「無音じゃない部分にはノイズが ばりばり乗ってる」場合。一般に、ノイズ除去作業は、「無音部のノイズ状態を 学習させた上で、無音じゃない部分のノイズを取る」。 そのため、学習させるところがない音源をもらうと、ノイズ除去できなく なっちゃうのである。だから、無音部のノイズを消去してはいけない。 無音部に全部ノイズ残せとは言わない(複数テイク録る時もあるし)が、せめて 数秒程度のノイズは残してほしい。

●頭出しをすること

頭出しとは、オケと各パートを「せーの」で同時に開始したら、ちゃんと同期して 再生されるようにボーカル音源の頭の空白を調整すること。そんなに厳密じゃなくて、 ざっくりあっていればよい。特にパートが多い場合、 これができてるとMIX作業が格段に楽になるので、やっておいてもらえると MIX師はとてもうれしい。「頭出ししてないとMIXしません!」という人もいるが、 我輩はそこまではこだわらない派。 だってそのくらいの調整はMIX師がしてもいいじゃん? 逆に、そういう人は位置調整が下手かできない可能性があるので、 依頼しないほうがいいんじゃないか?

以上、いろいろ述べてきたが、まとめたらこんなカンジ。

うん、簡潔ですね。 どうしてもだめな場合があることは理解できるので、そういうのは依頼時にちゃんと 後工程の作業者に伝えてくれればいいと思うよ!

off vocal音源を用意する

off vocal音源(いわゆるカラオケね)を用意するのは、歌い手だ。優しいMIX師なら、 この後の工程で用意してくれるかもしれないが、そういう人は稀であることを 知っておくこと。

提供する際、利用条件なども精査して、「正しいもの」を「無加工で」提供しなければならない。 たとえば、ニコニコ動画に上がっている「ニコカラ動画から音だけ抜いたもの」は、 off vocal素材としては不適当。ライセンス的な問題と音質的な問題があるためだ。

正しくは、オリジナル楽曲の提供元に書いてある注意事項に従う。 たとえば、バルーン氏の「シャルル」の場合を例示しよう。

  1. まずはオリジナルが提供されているURLを確認
  2. ここに、inst→http://piapro.jp/balloon0120と書いてあるので、そちらに移動
  3. すると、インスト(=off vocal)音源が提供されているので、使用条件・ライセンス(非営利に限る)を確認、同意して入手。後のMIX作業が楽になるので、可能なら2mix(マスタリング前)のものが望ましい
  4. 入手したファイル(.mp3)を、入手元を明確にした上でそのままMIX師に提供

時折、「オリジナルからインストが提供されてない、でもニコカラのOff vocalは 存在する」ということがある。このときも、ニコカラを使ってはいけない。 インストが提供されていないということは、作曲者による「歌ってみたはやって ほしくない」という意思表示かもしれない。また、JOYSOUNDに登録されたために 歌ってみたができなくなっているのかもしれない。そういう背景がわからない以上は、 あきらめるしかない。作曲者に直接聞いてみるという選択肢もあるが、できれば やめたほうがいい。おそらくそういう楽曲についての要望は山ほど作曲者に届いて いて、対応が大変だろうから…。

というわけで、ライセンス的に明らかにシロなoff vocalが用意できないのであれば、 その歌の「歌ってみた」はあきらめるのが正しい、というちょっと悲しいお話。

オケとボーカルをMIX

ここは通常MIX師と呼ばれる人々におまかせするところ。自分でやってみたいなら 止めないけれど、初期投資が数万円くらい必要なことと、ある程度のレベルに なるには才能と経験が必要なので、お勧めしない。以下ではMIX師にお任せする 場合の注意点を述べる。

●依頼するMIX師を選ぶ

MIXの依頼は、「知り合いのMIX師に頼む」のが一番楽。気心が知れてる人の方が 要求言いやすいし、トラブルも起きにくい。

不幸にして知り合いのMIX師が居ないか、その人のMIXがお気に召さない場合は、 誰かに頼むことになる。可能であれば、自分のお気に入りの歌ってみた動画などを いろいろ調べてそれらをMIXした人を探し、その人が公開してる「自分がMIXした作品」 のマイりストをじっくり聞いて、「この人だ!」という人を決めて頼むのが望ましい。 事前にMIXのイメージがつかめるし、頼まれるほうも「あなたにMIXしてほしい!」と 言われると嫌な気はしないから。

直接頼むのはちょっと…という場合は、MIXの依頼所がいくつかあるので、そこに 頼んでみるとよい。

A. TwitterのMIX依頼所
Twitterには、ボランティアでMIX依頼をリツイートしてくれるアカウントが いくつかある。MIX師はここをよく見ているので、ここにリツイートすることで、 それにリツイート・DMする形でMIX師が応募してくれる。代表的なものを列挙しておく。

文字数が限られるのでアレだが、依頼文にはこのくらいは書いておいてほしい、 という情報を以下に列挙する。一度のツイートで言い切れない場合は、連絡来た 方に返す形で補足してもかまわない。「音源を聞いた上でMIXを受けるかどうか 判断しても構わない」などもアリ。 過去のツイートを見直せば、いろんなパターンがわかるだろう。

いずれも重要だが、MIX師として一番やってほしくないのは、「日程を決めずに 予約されること」。依頼を受けた後いつになってもデータ送られてこなくなり、 忘れたころにデータやってくるとかされると、予定がまったく立たないし、 ほかのMIX依頼を受けるかどうかの判断もできなくなってしまう。だから、 上の項目は絶対に決定してから依頼し、後でもいいので依頼者に開示すること。

一般的な文例はこんなカンジ(120文字):

シャルルを、12/24までに無償でMIXして頂ける方を募集します。 マイク:AT2020、I/F:UR12で音源はすでに録音済みです。 こちらの歌声は、マイリス(twitterプロフ)を参照ください。 リプまたはDMでの連絡をお待ちします。

「DMで連絡」って書いてあるのに、フォローしてない人からのDMを拒否するように twitterを設定している人が多い。 そういうのはDM送ろうとして萎えてしまう。ので、せめて募集中には、 DMはすべての人から受け取るように設定しておくことをお勧めする。 というかそうじゃないと我輩はあんま応募しない。だってツイートで応募したら、 我輩のフォロワーさんのうち今依頼者が居たら「俺の放置して別のMIXしようと してやがる!」という悪印象を与えちゃう可能性があるから…。いつもは 三つくらいのMIX依頼を並列にやってるからさー。

投稿したら、丸一日は放置すること。MIX師を早いもの勝ちで選択しちゃうと、 向こうもこっちも不幸な結果になることが多いから。何人か応募があってから 考えればよい。でも、四日も五日も放置したら向こうも困るので、せめて 二日以内には反応するようにしよう。そのとき、選んだMIX師だけではなく、 選ばなかった方にも「今回はごめんなさい」と連絡することを忘れずに!

こういうMIX師を選べ!というコツは、一概には言いにくいのだが、たとえば以下の ような判断基準はあると思う。いい仕事(=MIX)をするかどうかというのは最初の条件で O.K.なのだが、オンラインでのこと、一緒に作業してちゃんと責任もって完成まで もっていってくれるかという部分も、実は大きな判断基準だ。

後ろ二つは、実際に依頼しないとわからないが、依頼した後にそのあたりに不満が ある場合は、再度お願いしないほうがいい。

裏返せば、MIX依頼者も同じ目で見られているということ。 自らも襟を正すことをお勧めする。

一方、「こういうMIX師は選ぶな!」というのは上の逆だが、以下のような条件もある。 悪意を持って判断するなら、もしかしたら技術不足か、あるいは「そのくらい依頼者が やれよ」という居丈高な性格が出ている可能性も否定できない。

B. したらば掲示板のMIX依頼所
匿名掲示板ながら、酷い荒らしに対してIPでのアクセス制限を設けたからか、 そこそこ秩序がある依頼所、 底辺ミキサーの集うスレ。まぁまぁ平和。我輩も時々出現してる。 MIXの依頼方法などは頭に書いてあるのでそれを参照。依頼すると、無名のMIXerが よってたかってMIXしてくれ、依頼者はその中から好きなのを選ぶことができる。

ただし、そこは匿名掲示板、以下のようなリスクがあることに注意。

  1. ボーカルに対し厳しい意見をもらうことがある
  2. せっかくMIX師を決めたのに、連絡がこないことがある
  3. 技術はともかく、人間的にどうかというMIX師を選んじゃうことがある
  4. 結局どのMIXも気に入らなかったということもありうる

なお、MIXの見返りとして、依頼者は、各MIXひとつひとつへの感想を提供する ことに注意。正確には「感想を書く必要がある」んじゃなくて、 「書いてくれたらうれしい」、というカンジかなぁ。 感想要らんという人もいるけれど。 この掲示板はMIX師の技術向上を目的に掲げているので、XXのMIXはここがよくてここが 悪かった、こうすればもっとよくなると思うなど、ただ褒めるだけではなくて、 次につながるような感想が、各MIXについているとみんながうれしい。 辛口でも構わない。むしろそのほうが喜ばれる。MIX数は多いと20とかになることも あるから、感想書くのも大変になることがあるけど、そのくらいはやってほしい かなって。

C. 2ch 底辺MIXerスレ
はっきり言えば、荒らしが出没して必ず荒れるのでお勧めしない。参考までに。 けちょんけちょんにけなされたり、MIXer同士で罵倒しあいになってるのを見る 勇気のある方はどうぞ。

ちゃんと上のしたらば掲示板へ誘導されてるのがちょっと微笑ましい。

 

ということで、依頼するMIX師が決まったとしよう。音源は、アップローダを使って やりとりすることが多い。Skypeのファイル転送機能を使うこともあるが、Skype IDを 相互に晒すことになるため、近しい関係になるまではちょっと危険な気がする。 代表的なアップローダを以下に示す。mp3やmp4をWeb上で流して 直接確認できて便利なので、我輩はGigaFile便が好き。

MIX作業にかかる時間は、人によってさまざま。依頼時に次の連絡日時を 決めておくことをお勧めする。その時までにMIX作業が間に合わなければ、 次の連絡日時を決めればいい。逆にそうしないと、いつまで待っても 連絡がない、ということが起こりがち。

我輩を例にすると、音源を頂いてから 完成まで、最低一週間程度時間がかかる。 実は作業自体は四日くらいでできなくもないんだが、予定調整や 飛び込み依頼への対応、作業中の聞き込みなどで、どうしても遅れがちになるため。 ちなみに、時間の内訳は、ピッチ・タイミング調整に 数時間/トラック、1stMIXまでのDAW調整に数時間(ここまでで三日)、あとは暇な時間に 延々流し続けて、荒さがしをしては微調整、を繰り返す。 自由な時間は一日に4時間くらいしか取れないから、これで精一杯なんだよね…。

MIXが終わったら、MIX師から上のアップローダ経由で、MIX済みの音源が WAVファイルで送られてくるだろう。期日までに連絡なかったりしたら、 勇気を出して催促だ。そのケースでは、催促しないと絶対前に進まない。 断言できる。

マスタリング

通常、マスタリングはMIX師がMIX作業の一環でやってくれる。のだが、 稀にやってくれない人がいるので、MIX師に依頼するときは、「マスタリングも やってくれますか?」と確認することをお勧めする。

マスタリングを別にするのは、 有償のMIX師に多い。で、マスタリングも別途有償なワケだ。マスタリング用の ツールも高価だし、それなりに知識・経験・技術が必要だから、気持ちはわかる…。

実は最近、ネットで「音源を送ると、自動でマスタリングした音源を返して くれるサイト」というのができてたりする。結構面白い結果を返してくれるので、 興味ある人は試してみると吉。お試しは無料だし。

できた音源を、動画と組み合わせてエンコードし、動画ファイル作成

動画と音源を組み合わせて投稿用の動画ファイルを作る作業を、エンコード またはエンコーディングと呼ぶ。多くは以下のような手順を踏むはずだ。

  1. オリジナルの動画ファイルをどこからか入手
  2. ツールを使って、この動画ファイルとMIX済みの音源をタイミングよく組み合わせる
  3. 投稿先動画サイトの推奨に合わせてエンコードして動画ファイルを作成

環境が整っていれば、作業自体は一時間もかからないくらいのものなので、 PC使うのが苦でない人は、環境を作っておくことをお勧めする。 もし環境をもっていないなら、エンコードしてくれる人を探すことになる…。 MIX師の中にはエンコードまでしてくれる人もいるので、そういう人を 探してみるもの吉。

以下、各手順をざっくりを述べる。

  1. オリジナルの動画ファイルをどこからか入手
    …我輩、いつもここがちょっとライセンス的にどうかと思っている。 実は、動画については「無償なら好きに使っていいよ」と述べている人は 極めて少ない。でもなぜか、「歌ってみた」が参照しているオリジナルの 動画については、そういう暗黙のルールがあるように見える。実際、 数々の歌ってみたでオリジナル動画が堂々と使われちゃってるし。 だもんで、いつもいいのかなと思いつつも作業してたりするよー、という そういうもやっとした書き方で。

    オリジナル(たとえばこれ)の 動画を入手するには、ニコニコ動画やYouTubeから動画ファイルを入手する ツールを使う。うーん、このへんもグレーなので、あんま詳しくは述べない。 有償ツールでそういうのを謡ってるのもあるし、無償ツールでも優秀なのが 存在する。我輩は Crav某(1.x系)とかいうツールを使わせてもらってる。 えーと、うーん、まぁそのアレだ、あんま聞くな!

    ここでごそごそして、なんとか動画ファイルを入手したとして、以下の解説は 進むのであった。

  2. ツールを使って、この動画ファイルとMIX済みの音源をタイミングよく組み合わせる
    動画と音源を組み合わせるには、いろいろツールが用意されている。 代表的なのは以下のようなものだろうか。

    我輩は aviutl+x264guiExを使わせてもらっている。

  3. 投稿先動画サイトの推奨に合わせてエンコードして動画ファイルを作成
    (2016/08にニコニコプレミアムも仕様が変わったことだし、) ほとんどの場合は、「とりあえず考えられる限りの高画質でエンコードしとけ」で十分。 ただ、ちょっとずつ投稿サイトによって推奨が異なるので、そういうのを 気にする人は、そういう推奨に従えばいいのですよ。各動画サイトの説明を よーくチェックすれば推奨はわかる。たとえば、YouTube、ニコニコプレミアム、 ニコニコ一般、Twitterでも、よーく見ると推奨が違うのがわかる。 やめてよそういうの…。

    んだけど、我輩はそんなのめんどくさくてやってられないので、x264guiEx デフォルトで設定されている「プロファイル」を愛用している。 upload先を指定するだけで適当なエンコードパラメーターを設定してくれて、 もっすご便利だから…。ホント助かってます。

アップロード

これはもう各サイトの手順どおりに。 アップロードしたら、一度再生してみて、 音や絵が壊れていないか、十分な品質か、などを確認することをお勧めする。

というところで、やっと「歌ってみた」動画が投稿されるわけだ。 たった一本の「歌ってみた」には、ことほどさように長い長い作業が必要で、 加えていろんな人が絡む可能性があるということを、投稿者の方には 先に知っておいて頂きたい。結構めんどくさい。でも、だからこそ 楽しいんやで!

おまけ

●オマケ1:MIX師に依頼するとき、有償・無償どっちがいい?

あまりにもいろんなケースがありすぎて、判断できない。有償だからといって 必ずしもスゴいMIX結果が得られるわけではないし、無償だからといって ひどい音源が出ててくるわけでもない。 どちらかというと、「既存のMIX済みの作品を聞いて気に入った MIX師を選び、彼への依頼が有償か無償か」で判断すればいいと思う。

有償の場合、MIXの相場は5000円/曲くらいだと思う。これはあくまで主観であって、 実際には500円/曲でやってる人もいるし、20000円/曲要求する人もいる。 どちらも間違ってはいない。アナタがその人にその価値を見出すなら、払えばいい。

いずれにしても理解しておいてほしいのは、MIXに必要な機材には結構な 金がかかるということ。 DAWは5万円、WAVES Platinumは6万円、Melodyne Studioは10万円。 一通りだけでもMIXできるようにいろいろ揃えると、どうしても20万円以上はかかる。 「無償でMIXを」と望む人は、それらの機材に加えMIXという技術をタダで提供しろと 言っているわけで、それはさすがに厚顔ではないかね、という気がしないでもない。

…まぁ我輩は趣味でMIXしてるので無償だけどナ! 「趣味でMIX師をやっているものだ」。ワンパンマンみたい。 そんかし、こっちから依頼を取りにいったのでなければ、音源は選り好みする。 ノイズ多かったり音域狭かったりなどしたら、全力で依頼を断る。 MIX依頼者は、そのくらいのリスクは負ってもいいと思うな。

●オマケ2:ハモリを音源を自ら録音するか?MIXで作ってもらうか?

結論:可能であれば、ハモリは自ら歌って録音した方がいい。

確かに、メインボーカルさえ あれば、MIXの段階で、Melodyneなどでメインボーカルをコピー・音程を変更して ハモリを作ることはできる。しかし、3度以上音程をつついた音はヤケにノイジーに なってしまって、聞いててつらくなる場合がある。加えて、コピーして作るハモリは メインボーカルに忠実なので、メインボーカルがキンキンしていたりノイズが 乗っていたりすると、メインボーカルとあわせた時にそこが強調されてしまう。 だから、自ら歌った音源があれば、品質面ではそっちが圧倒的に有利だ。

ハモリパートの音程がわからないよう、という人は、世界を探してみると そういうのを提供してくれてる人が居るかもしれない。 また、歌声りっぷなどを 使ってボーカルだけを抜き出せば、ハモリパートが聞き取りやすくなるかもしれない。 まずは自分でなんとかする努力をしてみようよ。
最終手段としては、MIX師に泣きついたら、ハモリパートだけをピアノで弾いた 音源を作ってくれるかもしれない(?)。そういうの作るの結構大変なんだけどね…。

なお、クワイヤ(ハーァーとかウーワーとかいうコーラス)は、いくらMelodyneでも 作り出すことはできないので、自ら歌ってくださいぜひ。クワイヤ音源というのも 確かに存在するけれど、やっぱり本人が歌った方が、その音楽に合うんですよな。

●オマケ3:他人に頼むということ

MIXやエンコードを他人に頼むということは、そこに人間関係的なトラブルが 起こる可能性があることを意味している。直接会うのではなくネットワークごしの 付き合いになるならなおさらだ。どんなに人当たりがよさそうでも、どんなにMIXが 上手でも、やりとりには細心の注意が必要だ。トラブルになってからでは遅い。

歌い手とMIX師がトラブルになった例を出そう。

「なんで!?」とか「これだけのことで!?」と思うかもしれない。頭おかしいと 思うかもしれない。しかし、現実にあったことだ。こういったことが原因で、 歌をやめてしまった人が複数数人居る。中には非常に上手な人も居ただけに、 本当に勿体ない。

理解しないといけないのは、「世の中にはいろんな人がいる」ということ。そして 中には、異常に引火しやすかったり、導火線が異様に短かったり、 爆弾がやたらめったら大きい人も居る、ということだ。みんながみんな善意だけで 生活しているわけじゃない。だからこそ、他人に何かを依頼するときには、 細心の注意を払ってほしい。

具体的には以下の二つ、これだけは必ず守ろう。

これだけで、トラブルは激減する。人間は、自分が思わぬ・望まぬように 他人が動くのを嫌う傾向にある。だから、常に「私はこうしようと 思ってますよ、いいですか?いいですね?じゃぁしますよ?」などと丁寧に 通知することで、導火線に引火するのを事前に回避することができるわけだ。

トラブルを回避するもう一つの効果的な方法は、上にも書いたが、 「依頼先の人のSNSの過去ログをチェックする」こと。 これで、その人がトラブルを引き起こしやすい人かどうかすぐにわかる。 書き込みが「理性的で敬意を伴って丁寧」である人はトラブルを起こしにくいし、 複数からリピート依頼されているなら、その人の能力は高く、また円滑に物事を 処理していることがわかる。このくらいは依頼前に調査してもいいいかもしれない。

たった一枚の写真から、自宅が特定されうる時代。トラブルが起こると、 予想せぬ形で攻撃を受けてしまうかもしれない。人付き合いにも、かつて無いほどに 繊細な注意が必要になる時代、ということだ…悲しいことだけれど。

自分でMIXする歌い手が多いのは、決して「自分好みのMIXができるから」という 理由だけではなく、きっと過去にいろいろあったからなんだろうなぁ、と 想像すると、気分が引き締まるかもしれない…。


さぁ!言いたいことは全部書いたはずだ! ほかに、こういうことも追記しとけというトピックがあれば、ぜひ教えてください。