2016/11/29
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歌ってみたMixをはじめるために必要な機材

本書では、いわゆる「歌ってみたMix」をはじめるために、いったい何が 必要なのか、を列挙する。レベルごとに書いてみたので、少しずつ レベルアップしていくのを目論む人や、必要な出費を確認したい人には 役立つものになっている…と信じたい。

あ、念のため書いておくと、歌ってみたMIXとは、「配布されているオケと、 ボーカルだけの音声データを、ビゴンとあわせる作業」。聞くからに簡単そうなのに、 やってみるとヤケに奥と業が深い作業でありますよ。

作曲してドラムとベースとギターを合わせて云々、という作業は「パラミックス」と いう別のものですよプロデューサーさん!容易に想像できるように パラミックスの方が65536倍難易度が高い。

レベル0:とにかくボーカルとオケをあわせるのだ!
レベル1:ボーカルをある程度は処理したい!
レベル2:歌ってみたMIXができる環境を一通りそろえたい
レベル3:レベル3:ピッチ・タイミング修正もやりたい


レベル0:とにかくボーカルとオケをあわせるのだ!

ただボーカルとオケをあわせるだけなら、 AudacitySoundEngineなどの フリーツールが使える。ボーカルとオケを読み込ませて、前後位置を調整して 書き出すだけ。簡単。

実は、AudacityもSoundEngineも実に懐の深いツールだ。 単純にオケとボーカルとをあわせるだけではなく、やろうと思えばノイズ除去や、 リバーブやディレイなど、ある程度のエフェクトを追加することもできる。 VSTプラグインが利用できたりもするので、(歌ってみたMIXをするために必要な) 「機能的には」後に紹介するDAWなどともそんなに遜色がなかったりもする。

ただし、エフェクトを追加する作業の能率は極めて悪い。リアルタイムの パラメータ変更と効果の確認を、複数のエフェクトに対し同時に行うことが できないからだ。だから、よっぽど操作に自信があるのでない限り、 これらのツールでエフェクトを追加することはしないほうがいい。

また、音質や、エフェクトのノリもあまりよくない。これはツールが取り扱える 音データの周波数・ビット数に制限があったり、内部処理やエフェクトのつくりが イマイチだったりすることに起因する。後述するDAW+WAVESのVSTプラグインなどで 実現したものと聞き比べると、少々チープな印象を受ける。そりゃ企業が有償提供 しているものと個人が趣味で作ってるものを比較するのは間違ってるのは わかってるけど、現実問題として。

とはいえ、我輩は、ステレオ→モノラル変換とノイズ除去だけはAudacityで長く やっていた。今でもステレオ→モノラル変換はAudacityでやっちゃうことが多い。 処理的に音質の劣化もないだろうし。ノイズ除去はiZotope RX5を購入してからは 使う機会も減ったが、今もちょっと作業するときには使っている。

レベル1:ボーカルをある程度は処理したい!

最近はDAW(Digital Audio Workstation)という、プロも使っているような オーディオ編集用のツール(の入門用)が、安価に入手できるようになった。 オーディオインターフェースを買うと、それにDAWがくっついてくることも多い。 UR12とか一万円で買えるのに、素で買ったら一万円以上するDAWが ついてくるとか、頭おかしいにもほどがある。企業さん何考えてるの。

入門用とはいえ、さすがにプロも使うツール、音質については申し分ない。入門用だと 同時編集可能なトラック数が限られてたりもするが、(自分で作曲しない) 歌ってみたMIXならまぁ十分だ。ワンショットではなく歌ってみたMIXを続けたいなら、 level0で紹介したツールを長く使うよりは、こっちをそろえたほうがいい。 後からエディションアップグレードできるし。ケロケロ加工も、これ+ keroveeとかで 一応できるし。

短所は、操作が複雑なこと。DAWは作曲にも使えるので、歌ってみたMIXに使うには 余計な機能がいっぱいついている。いらん表示やメニューも多いので、まずその 操作体系に悩むだろう。また、最初から搭載されている機能が少ないことにも 困ることがある。たとえば、UR12についてくるCubase AIには、 イコライザのVSTが用意されておらず、各トラックにはひとつしかイコライザが 存在しない。リバーブもディレイも最低限のものしかなく、ほしいエフェクトを 実現するのが難しかったりもする。フリーVSTをてんこもりにしてもいいが、 なかなかいい品質のVSTは少なくてね…。

しかし、入門用としては十分アリだ。操作に慣れて、その後に多機能な 上位版にアップグレードできるというのはメリットとして大きい(有償だけど)。

なお、 Studio One Primeは0円で入手できるが、使えるVSTが激烈に少ないうえに 後から追加もできないそうなので、よっぽど試してみたいときじゃなければ 手を出さないほうが無難。それよりは、各DAWは一ヶ月程度制限なしに試用できるので、 試用してみて使い勝手を確認して好きなものを選んだ方がいいと思う。

あと、DAWの多くはPCのサウンドデバイスではなくて、ASIOというデバイスに 音を出力するのだが、これは基本的にオーディオインターフェースを使うことを 前提にしている。ASIO4ALLや Cubaseなら付属のGeneric Low Latency ASIO Driverを使えば、PCのサウンドデバイスを 使用できる。ただし、DAWがサウンドデバイスをつかむとほかの音はすべてミュート されてしまうので、あまり実用的ではないことを知っておくこと。

レベル2:一通りの歌ってみたMIXができる環境をそろえたい!

オーディオインターフェースが必要になるのは、モニタリング用のヘッドフォンを 接続するため。オーディオインターフェース経由のモニターヘッドフォンの音は、 PC内蔵オーディオとはちょっとレベルの違う解像度がある。ホワイトノイズが 乗ったりしないし。だから、オーディオインターフェース&モニターヘッドフォンは、 ある程度以上の品質のMIXをしたいなら、必須のアイテム。

一方、DAWはlevel1で紹介した入門用のものでよい。なぜなら、追加で購入する WAVES GOLD Bundleが、入門用DAWに不足しているほとんどの機能を、 VSTプラグインの形で提供してくれるから。

いろんな人が書いているとおり、WAVESの製品は、 「必ずセールのときに買うこと」。70% Offとかアタリマエなので、定価で買うと とてつもなく損をする。セールのときだと、Gold Bundle は2万円ちょっとで 購入できる。そして、コレ持っとけば今後もずっと末永く使える。 買っとけ!絶対損しないから!

これだけそろえれば、一通りの歌ってみたMIXはできるようになっているはず。 もちろん、きれいにMIXするには、ツールへの習熟やいい耳、加えて音楽的な感性は 必要になるが、 環境としては十分だと思う。そして、歌ってみたMIXをやり続けたいなら、 我輩はこの構成を最初にそろえることをお勧めする。 一番コストパフォーマンスが高く、本当に一通りそろっていてしばらく困らないため。

レベル3:ピッチ・タイミング修正もやりたい

ピッチ・タイミング修正をするには、以下のいずれかが必要になる。

  1. AutoTune
  2. Melodyne
  3. 上級者用DAW(に付属のピッチ調整ツール)。CubaseならVariAudio

そのためには、いずれかのツールを買わねばならない。それぞれにメリット デメリットがあって、どれを選べばいいかは悩ましい。できれば全部そろえたいところ。

ピッチ・タイミング補正のフリーツールとして、 VocalShifter なんてものもある。機能的にはこれでも問題ないんだが、やっぱり品質および操作性が 上で列挙したものにはちょっと及ばない。スッゴい上手な人がボーカル歌ってて そんなに大きな補正が必要ない場合か、品質をそんなに厳しく問われないMIXになら 十分使える、んだけど…。


…とまぁこんなトコだろうか。level3以降は、必要に応じて、iZotope Ozone7とか、 WAVES Platinum/Diamondへのアップグレードとか、あるいはほしいVSTプラグインだけを バラで入手するとか、そういうカンジで必要なものを追加していけばよろし。

参考までに、今の我輩の環境。…思ってた以上に金使ってるなぁ…。 この中で後悔したのはCubase Pro。これはCubase AIでもよかったわー、って。