2023/09/13
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※SPAM防止のため捻ってある

Beelink EQ12 Proで遊ぶ

■はじめに

本文書は、BeelinkEQ12 Pro i3-N305というミニPCの導入記である。

■Beelink EQ12 Proとは何ぞや

一言で言えば「CPUがIntel N305の中華ミニPC」。
Intel 第12世代から低消費電力CPUとしてNシリーズがラインナップされ、今までとは一線を画する 性能に世間様がざわついている。N100が安価+高性能でメジャーだが、N305はその倍程度の性能を持ったCPUで、我輩にはこっちの方がストライク。だもので、N305搭載のミニPCを探していた。なんでミニPCかというと、実家のママン用のPC(Core i3 2120T)がそろそろ寿命なんで更新したく、その際省スペースだとママンが喜ぶため。

ミニPCの選択肢は他にもあるけど、beelinkを選択した理由は以下。

このほかにも以下のような条件あったけど、上の理由に合致しつつ下を満たすものがなかったので却下。SkyBariumはよさそうだったけど情報が少なくてね…。

■購入してみた

Amazonからさくっと購入。当時クーポン付で45800円。最安だともう少しお安く買えるようだが、 今回は入手速度を重視した。ちうか、Win11Pro(25000円くらい?)ついてこの価格っておかしいよね。一体どうなってんだか。

見た目は悪くない。外装がプラなのが放熱的にどうかなという気はする。

EQ12Pro外観

■分解

初回電源投入前に分解しちゃう漢らしさよ。
底面のネジ四本外すとパカリと開き、7.5mm厚のSATA SSD/HDDが搭載可能なポートにアクセスできる。さらにSATAコネクタ止めてるネジ二本外すと、メイン基盤にアクセスできる。メイン基盤とその上のSATA SSD/HDDマウンタは二本のケーブルで接続されているので、切らないように注意。

EQ12Pro分解

確かにメモリはスロットに載ってて、なぜかCrucialのいいヤツだった。

Crucialメモリ

一方、NVMe SSDは聞いたことない中華メーカーのもの。こっちは交換した方がいいかもしれない。とはいえ、いろんなトコに書かれているように、NVMeはPCIe x1接続なので、速度には期待しない方がいいし、イイモノに変えても発熱低下以外の効果はないと思う。あ、SSDは片面実装じゃないと下にあるWiFiに干渉しちゃうので注意。

■消費電力

実測で大体以下くらい。優秀。

状態消費電力
アイドル時8~10W
通常使用時~25W
最高負荷時32W

■32GBメモリを載せてみる

実はこれが一番確認したかったこと。
BeelinkのEQ12 Pro製品ページには最大16GBと書かれている。IntelのN305(N100も)のページでは、最大メモリサイズが16GBと書いてある。「メモリーの種類に依存」という注意書きがあるが、コレが何に依存するのかはこのページからは分からなかった。一方、GIGABYTEのN305マザーや、SkyBariumのN305搭載ミニPCのAmazonページには、最大メモリが32GBという記述がある。一体最大メモリ量は16GBか?32GBか?どっちなんだい!

というわけで、実験用にコルセアのDDR5 4800MHz 32GBのSO-DIMMを買ってきたよ!型名は CMSX32GX5M1A4800C40

コルセアメモリ1
コルセアメモリ2

早速載っけてみる。EQ12 Proは残念ながらメモリスロットが一つしかないので、元の16GBと交換。

32GBメモリ搭載

起動すると、なんの問題もなく32GB全部認識した。BIOS画面でもWin11上でも問題ない。…Serial Number が "Default string" って何だよ。

BIOSでメモリ32GB認識
Windowsでメモリ32GB認識

memtestを実行して特に問題なくPass。なんかSPD情報がおかしいのはまぁいいや。なんだよN305で32GBメモリ使えるじゃんかよ!最高かよ!もちろんこの情報は非サポートやろね。

MemtestPass

気になったのは温度。memtestを1Passするだけで、最高温度が81℃になってるのは高すぎないか。廃熱も筐体もスゴ熱かったし、やっぱりミニPCではCPU回すような処理は向いてないんだろうなぁ。

■Win11のライセンスの話

他所にも記述があるように、コマンドラインから slmgr /dlv で確認したところ、最初は プロダクトキーチャネルが Volume_Mak だった。つまり、ボリュームライセンスだった。で、Win11をクリーンで再インストール後は Retailに変化した。つまりリテールライセンスに変わった。これがどういう意味を持つのかは分からない。機能的には使えてるので、もうそれでイイやということにする。あとはMSとBeelinkとで会話してくれぃ。

トラブルが一つあった。 最初普通に使えててデジタルライセンス認証済みと表示されてたんだけど、一度Win7互換バックアップを取得して何かの折にそれにリカバリしたところ、「ライセンス認証されていない」になってしまった。MSアカウントにも紐づけてたハズなのに、どうやってもそのまま。困ったのでbeelink のサポートのコンタクトリストから "PC after-sales service support" であるところの Support-PC@bee-link.com に英語でメールを書いた。ら、数時間後に「このライセンスキーを使え」と返信がきて、ソレを使うと確かにまたライセンス認証されるようになった。対応の是非はさておき、対応速度はスバらしく、助かった。Beelink、案外サポート頑張ってるよって話。

■別PCのWin10をEQ12 Proに移動する

元々、EQ12 ProはママンPCのリプレース用に買ったものだ。で、ママンは年寄りなので、環境が変わることに大変な抵抗がある。Win11の真っ白インストールマシンを渡したら、多分使い方が分からず発狂してしまうので、今あるママンPCのWin10の環境を、そっくりそのままEQ12 Proに移動できないか考えてみる。Win10はリテール品なので、ライセンス的には問題ない。

SSDコピーすりゃいいんだけど、そもそも元PCがBIOS起動なので、これを機にEFI起動に変更したいし、そうするとSSD上でEFIパーティションの位置がC:ドライブの後になって気持ち悪いので、パーティションも切りなおしたい。こういうのはEaseUSのフリー版が便利だったのだが、最近フリー版ではそういうのができなくなっちゃったそうで。だったらLinux使ってやっちゃうよ!ということで、 systemrescue を使って、そゆことしてみる。以下、「元PC」がママンの現在のPC、「先PC」がEQ12 Proとして、手順。

  1. 元PCのディスクチェックなどを実行
    実行するのは以下三つ。いずれも管理者権限でCMD.exeから実行。
    # chkdsk c: /f
    # sfc /scannow
    # dism /online /cleanup-image /restorehealth
  2. 元PCのOSをWin7互換バックアップで全てバックアップ
  3. 元PC上で MBR2GPT.exe を実行して、BIOS→EFIに変換
    Windows上で管理者権限でコマンドラインを起動し、以下を実行
    mbr2gpt.exe /convert /allowfullOS /disk:0
    これにより、disk0は「Cドライブ→EFI(100MB)→回復パーティション(500MB)」みたくなる。再起動してBIOSでEFI起動に変更し、ちゃんとWindowsがEFI起動できるか確認しておく。
  4. 元PCをsystemrescueで起動し、ntfscloneでC:ドライブをどっかにバックアップ
    # ntfsclone -s /dev/<SOURCEDEV> -o <backup.img>
  5. C:ドライブパーティションの正確なサイズをメモ
    以下のコマンドで MiB 単位とセクタ単位でサイズを確認し、メモしておく。開始・終了位置は不要。 セクタ単位でも必要な理由は後述。
    # parted /dev/sda -s u MiB p
    # parted /dev/sda -s u s p
  6. 先PCをsystemrescueで起動し、NVMe SSD上にパーティション作成
    ここでは NVMe SSD を /dev/nvme0n1 とする。 回復パーティションは無駄だと思ってるので作らない派。最も重要なのは、/dev/nvme0n1p3(C:ドライブ)は元PCのC:ドライブと全く同じサイズで作ること。場合によってはMiB単位で同じサイズで作ったのにセクタ単位で確認したらちょっと小さいなんてことがあるので、最終的にはセクタ単位で確認して、上でメモしたものと異なるならセクタ単位で再作成すること。
    # parted /dev/nvme0n1
    	mklabel gpt
    	unit MiB
    	mkpart primary fat32 1 101                   ...................EFI領域作成
    	name 1 "EFI system partition"
    	set 1 boot on
    	set 1 no_automount on
    	mkpart primary 101 117                       ...................MSR領域作成
    	name 2 "Microsoft reserved partition"
    	set 2 msftres on
    	set 2 no_automount on
    	mkpart primary ntfs 117 <117+上でメモしたC:ドライブのサイズ> ...C:作成
    	unit s
    	print
    	(3がセクタ単位で同じか確認、違ったら再作成)
    	name 3 "Basic data partition"
    	quit
    
    これで、以下のようなパーティションができたはず。
    Number Start  End   Size   File system Name                         Flags
    1      1049kB 106MB 105MB  fat32       EFI system partition         boot, esp, no_automount
    2      106MB  123MB 16.8MB             Microsoft reserved partition msftres, no_automount
    2      123MB  ##GB  ##GB   ntfs        Basic data partition         msftdata
    
  7. 先PCの/dev/nvme0n1p3に、さっきのバックアップを戻す
    # ntfsclone -O /dev/nvme0n1p3 -r <backup.img>
    これでC:ドライブは復旧された。もし大きくしたいなら、gpartedで大きくするか、後でWin10が正常に起動するようになってから「ディスクの管理」ツールで大きくする。
  8. 先PCをWin10インストールUSBで起動→コマンドラインからブート領域を修復する
    diskpart起動
    	select disk 0
    	select partition 1
    	format fs=fat32 quick ... 必要:EFI領域中に不要なデータがあると失敗するので
    	assign letter=S
    	exit
    bcdboot C:\windows /s S:
    
    これで先PCが元PCのOSそのままで起動するようになったはず。
  9. 先PCを新ドライブで起動する
    この時、起動できずに固まったり再起動を繰り返すなら、一度セーフモードで起動する。そうするとなぜかその後は普通に起動できるようになる。
  10. C:をchkdskする
    特にボリュームを縮小しようとすると壊れていると言われることがあるので、C:ドライブのプロパティ→ツールから「ドライブのエラーをチェックします。」→「ドライブのスキャン」で一度チェック・修復する。エラーがあった場合は再起動を伴うので注意。
  11. ドライバをインストール
    実はドライバはWin11とWin10で共通して使える

リカバリ時のC:ドライブを、バックアップ前と全く同一サイズで作成することがとてつもなく大事。大きい分にはいいんじゃ?と思うだろうけど、実際には、バックアップ時より大きくしちゃうと、ちゃんとリカバリはできてWindowsは問題なく動くもののの、Windows上でC:ドライブのサイズの変更ができなくなっちゃうという不具合が起こる。多分原因は、Windowsが「パーティションサイズいっぱいになってないNTFSファイルシステムなんか知らん」とダダこねてるため。
復旧策はあって、その場合はsystemrescue上でgparted起動してC:(≒/dev/nvme0n1p3)を任意のサイズに変更すればよい。でもソレ面倒だし。

回復パーティションを再作成したい場合は…「reagentc コマンド」くらいでググればわかるかもよ(投げた)。

■スリープできないよ?

上の方法でWin10イメージを移行したところ、スリープできないという問題が起こった。 電源オプションに「スリープ」という項目が出てこない。そんなことある…?

"powercfg /a"で確認すると、グラフィックドライバがスリープに対応してないとのこと。デバイスマネージャ確認したら、グラフィックがIntel UHD Graphicsではなくてマイクロソフト標準グラフィックとして認識されていた。これが原因か!

IntelのサイトからIntel UHD Graphicのドライバを持ってきてインストール、OS再起動後はスリープできるようになった。よかった。

ただ、スリープからの復帰はあまり早くない。10秒くらいはかかる。のんびり待つよろし。

■その他

困ることがいくつか。運用でカバーするしか。

■おわりに

Beelink EQ12 Pro、普段使いのPCとしては必要十分な作りで、ママンもニッコリだった。CPU速度は第七世代Core i7に匹敵し、メモリも32GB認識するし、性能的には暫く困ることはなさそうだ。

懸念点は以下二つ。

■参考

運用上のトラブルもいくつかあるみたいね…。