2024/06/20
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ケイジバン

Windowsシステムディスク複製前の準備

本書では、Windows10/11での、(PCハードウェア移行やらHDD/SSD換装に伴う)システムディスク複製時、その前に実行すべき事柄について列挙する。

そもそもシステムディスクを複製するのは「Windowsの環境がちょっとでも変わるとイヤ」という超保守派のための大変ニッチな方法であって、あなたがもしOS再インストールしても元の状態に戻せる自信があるなら、そんな面倒なことをせず、新マシンに新規OSインストールした方がよろしい。その方がレジストリや不要ファイルや潜在的なコンフリクトとかが削除されてOSとしても安定するから。

と前置きしつつ目次。

  1. Windowsライセンス確認
  2. 3rdパーティ製品のライセンス移行方法確認
  3. フルバックアップ
  4. 不要ファイルの削除
  5. BitLocker解除
  6. Windows OS ファイルの整合性チェック
  7. ドライブの整合性チェック
  8. 移行後に必要なドライバファイルの取得
  9. システムディスクがGPTであることを確認
  10. ヘンなパーティションがないか確認
  11. 実際の複製作業

■Windowsライセンス確認

まず確認すべきは、利用しているWindowsのライセンス。 コマンド "slmgr -dli" を実行すると、「説明」項に表示される。大きく三つに分類される。

同じPC上でHDD/SSDを別のものに換装する場合、RETAILなら確実、OEMなら概ね大丈夫、VOLUMEだと変更できない。ライセンスに問題がある場合、次のOS起動時にライセンス入力が求められる。ライセンス入力しないと、Windowsは起動するが機能が大幅に制限される。その場合は別途Windowsライセンス買ってきて入力すれば、また普通に使えるようになる。

■3rdパーティ製品のライセンス移行方法確認

そのPCで使用している3rdパーティ製品によっては、そのPC(多くはマザーボード)に紐づけられたライセンス管理をしているものがある。例えばWAVES、Cubaseなどの音楽系のツール群など。これらは製品ごとに移行方法が異なるため、それぞれ確認する必要がある。

例えば、WAVESはPCに紐づいており、ライセンス移行処理せずに新しいPC上で動作させると、「ライセンスないよ」と表示されて使用できない。以前のPC上でライセンス削除→新PC上でライセンス導入すれば使えるようになる。しかし、例えば以前のPCを廃棄した後だとライセンス削除できないため、ライセンス再購入しなければならなくなる。実際にはWAVESにはそういうケースでの救済手段があるが、「その後一年間はライセンス移行できない」など厳しい制限がつく。

とはいえ実際には、CPU/メモリ/HDD/SSDの変更だけではライセンス問題になることは殆どない。全然別の(マザーボードが異なる)PCに移行して動作させようとすると問題になることが多い。

■フルバックアップ

まずは、なにはともあれバックアップを取得することを強くお勧めする。その際、ファイルを一つずつバックアップするのではなく、C:ドライブ全てを一括バックアップすること。具体的には、「Windows7互換のフルバックアップ」を取得する。

[コントロールパネル]→[バックアップと復元(Windows7)]→[システムイメージの作成]

これで、途中で何があっても元に戻せる保証ができる。バックアップサイズは「C:ドライブの使用中領域」分必要なことに留意。

どうしてもそんな空き容量が用意できない場合は、代わりに拙作DiskCloneを使うと、こっちのサイズは(ZIP圧縮するので)更にその半分くらいになる。

■不要ファイルの削除

不要ファイルがそんなに多くない場合は、特に削除する必要はない。しかし、 不要ファイルを削除しておくと、システムディスクを複製する時にコピーが必要なファイル量が少なくなり、効率的に複製できるので、これを機会に掃除しておくことをお勧めする。

どんなファイルが不要かを判断するのは少し難易度が高い。以下に説明を記すので、これを参考に、不要ファイルを確認し、不要と判断したら削除する。バックアップがあるので、誤って削除しても、上でバックアップは取得しているはずだから、最悪バックアップから戻せば良い。

  1. ゴミ箱
    これは最も簡単。一度も掃除したことない方は是非。

  2. Webブラウザのキャッシュ
    Webブラウザのキャッシュは、気付いたら数GB以上になっていたりする上に自動でクリアされないので、この機会にクリアすることをお勧めする。Chromeなら以下の操作でクリアできる。

    [設定]→[プライバシーとセキュリティ]→[閲覧履歴データを削除]

    Chromeの場合、実際のデータは C:/Users/ユーザ名/AppData/Local/Google/Chrome/User Data/Default/ 以下の *Cache*フォルダ以下に存在する。Service Worker\CacheStorage\ 以下は大きいが、ここはどうにもならんので諦めること。消す情報もあるにはある

  3. Apple製品の不要ファイル
    Apple製品は不要ファイルを残しがち。なので、不要なファイルを積極的に探して削除する必要がある。数十GBを節約できることがある。

    1. iPhoneのバックアップファイル
      以下の操作で削除可能。これを機会に一度全部削除してもよいし、複数取得している場合は最新のもの以外は削除してよいと思う。

      iTunes→[編集]→[環境設定]→[デバイス]

      実際のデータは、C:/Users/ユーザ名/AppData/Roaming/Apple Computer/MobileSync/Backup 以下に格納されている。

    2. iPhoneのアップデート情報
      Windowsを経由してiPhoneをアップデートした場合、 C:/Users/ユーザ名/AppData/Roaming/Apple Computer/iTunes/iPhone Software Updates 以下にアップデートファイルが残る。これらは自動的には削除されないので、手作業で削除する必要がある。同フォルダ内のファイルは、全て削除して構わない。

    3. Appleアプリの古いインストーラ
      C:/ProgramData/Apple/Installer Cache 以下に格納されている。これらも自動では削除されないため、手作業で削除する必要がある。ただし、この下のフォルダのうち、インストールされていない古いバージョンのもののみ消すことに注意が必要。.msiファイルはアンインストーラを兼ねるので、インストール済みのものを消すとアンインストールできなくなってしまう。

  4. DriverStoreの古いドライバ
    Windowsは「いつか使うかもしんないから」と一度インストールしたドライバを(古いバージョンも含めて)DriverStoreという場所に後生大事に保存する。このため、長時間運用したWindowsシステムでは、DriverStoreが非常に大きくなっていることがある。MSとしてはDriverStoreはつついてほしくないそうだが、あまりにもデカい場合はなんとかしたいので、有志が作ったツールDriverStore Explorerを使って削除することを検討してもよい(リンクの下の方、"Releases"項から入手できる)。 実際にDriverStore Explorerで削除する際、不要なものがわからなければ、[古いドライバーのみ選択]→[ドライバーを削除]で、最新バージョンだけ残して古いバージョンだけ消去すればよい。

    DriverStoreは実際には C:/Windows/System32/FileRepository/DriverStore 以下に格納されている。

  5. グラフィックドライバ
    Windowsではグラフィックドライバ周りの問題が多い。「新バージョンをインストールしても古いバージョンのが悪さして困る」こともよくある。これをなんとかするために、DDU(Display Driver Uninstaller)というものが存在する。nVidia/AMD/Intelのグラフィックドライバを、OS上から完全に削除するためのツール。例えばAMDのグラフィックカードを使っていて後にnVidiaのものに乗り換えた場合など、AMDのグラフィックドライバはOS上に残り続けるので、これを削除する時にも使ったりする。

    セーフモードで実行する必要がある、など制約は多いが、特にグラフィックカード変更を伴うPC移行の場合、実行をお勧めする。

  6. Windowsのファイル履歴
    [コントロールパネル]→[ファイル履歴] から確認。ファイル履歴がオフになっているなら対応不要。 また、コピー先ドライブがバックアップするドライブでないなら同様に対応不要。 ファイル履歴を削除するなら、同画面の [詳細設定]→[古いバージョンのクリーンアップ] を実行する。失敗することがあるがその場合は無視してよい。

  7. 復元ポイント
    誰が使ってるのか知らんがWindowsはことあるごとに復元ポイントを設定したがる。その上古いのを削除したがらない。即ち復元ポイントがどんどん溜まってどんどん大きくなる。これも数十〜数百GBになったりする。ので、削除を検討してよいと思う。

    方法は、エクスプローラ上でC:ドライブを選択して、上の三点から「クリーンアップ」→[システムファイルのクリーンアップ]→[その他のオプション] で、[システムの復元とシャドウコピー] の [クリーンアップ] を実行。これで最新の復元ポイント以外は消える。 最新の復元ポイント含め全部消したいなら、PC→プロパティ→[システムの保護]→[保護設定] から ドライブを選択→[構成[→[削除]。

■BitLocker解除

BitLockerはドライブを暗号化する技術。BitLockerが適用されたHDD/SSDは、外して別のPC上で中のファイルを読み込もうとしても読み込めない。 普通にWindowsを使用している分には問題ないが、今回のようにHDD/SSDを外して云々する場合に、システムディスク内のファイルにアクセスできないと複製に失敗するなど問題になることが多い。 そのため、システムディスク複製前に、システムディスクのBitLockerを一度無効化することを強くお勧めする。無効化に必要な回復キーはMSアカウントに保存されているので、MSアカウントにログインして確認するよろし。

本来BitLockerはユーザが有効化しないと適用されないはずなのだが、MSの陰謀で知らぬうちにBitLocerが有効になっていることがある模様。BitLockerが無効かどうかは、例えばエクスプローラ上でC:ドライブ選択して右クリックメニューに「BitLocerを有効にする」が出てくるかどうかで確認できる。

■Windows OS ファイルの整合性チェック

殆どおまじないではあるが、MSからWindowsのOSファイルの整合性チェックと修復のツールが提供されている。それがdismとsfc。管理者権限でコマンドラインを起動し、以下の二行を逐次実行する。最近のマシンでも10分くらいかかる。念のため、この後は一度OSを再起動して、正常起動を確認することをお勧めする。

sfc /scannow
dism /online /cleanup-image /restorehealth

何故だかは不明だが、結構な頻度で「ファイル壊れてたので直した」というメッセージが表示されるので、何もなくても年一くらいで実行するのが無難かもしれない気がするようなカンジ…?

■ドライブの整合性チェック

複製中にエラーとなるのを防ぐため、複製するドライブの整合性を予め確認しておく。 管理者権限でコマンドラインを起動し、以下を実行する。

chkdsk /f c:

C:ドライブに実行すると「今実行できないから次回OS起動時にチェックする?」と聞かれるのでYと入力すると、次回OS起動時に結構な時間をかけてチェックしてくれる。最近は(SSDだし)ファイルシステムが破損するようなことは滅多にないが、これも年一くらいで実行しておく方がよいかもしれないと思わなくもない。

■移行後に必要なドライバファイルの取得

PCを移行あるいはハードウェアを変更する場合、移行/変更後に必要になるドライバファイルを予め取得し、インストールもしくはC:ドライブやUSBメモリ上に配置しておく。 特に以下の三つについては、PC移行前に調査し、用意しておくことをお勧めする。

  1. ストレージドライバ(HDD/SSD/NVMeなら不要、SCSI HBA経由の場合は必要)
  2. ネットワークドライバ
  3. グラフィックドライバ

例えば、ネットワークドライバがなければPC移行後にネットワーク経由でドライバをインストールすることはできないし、ストレージドライバがなければそもそも起動すらできない。最悪でも移行後にOSが起動し、ネットワークだけは繋がるようにしておくこと。

■システムディスクがGPTであることを確認

今時MBR(というかMS-DOSパーティションテーブル)を使っている人はそうそう居ないと思うが、念のため確認しておく。コマンドラインを起動し、以下を実行する。

diskpart
DISKPART> list disk

ディスク0(通常C:ドライブ)の [GPT] 項に "*" がマークされていることを確認する。マークされていれば、C:はGPTであり、何もする必要はない。実際の出力は以下。

C:\Windows\System32>diskpart

Microsoft DiskPart バージョン 10.0.26100.1150

Copyright (C) Microsoft Corporation.
コンピューター: MY-PC

DISKPART> list disk

  ディスク      状態           サイズ   空き   ダイナ GPT
  ###                                          ミック
  ------------  -------------  -------  -------  ---  ---
  ディスク 0    オンライン          1863 GB  2048 KB        *  ← これ
  ディスク 1    メディアなし             0 B      0 B
  ディスク 2    メディアなし             0 B      0 B
  ディスク 3    メディアなし             0 B      0 B

DISKPART>

コマンドラインから確認するのが難しいのであれば、 コントロールパネル→[Windowsツール]→[コンピューターの管理]→[ディスクの管理] から、ディスク0 を選択して右クリックメニュー→[プロパティ]→[ボリューム]タブから、"パーティションのスタイル" 項を見ると、GPT かどうかが判る。

MBR(MS-DOS) だった場合、可能な限り GPT に変換することをお勧めする。何か起動障害が起った時の回復が、楽かつ確実になるため。 変換するには MBR2GPT というコマンドを使用する。詳細は他のページなどを参照されたし。実際にはMBR2GPTは「MBR→GPT変換」「BIOS→EFIブート変更」の二つを実行するので、次のOS再起動時にBIOS上でEFIブート有効化の手順が必要になることに注意。

■ヘンなパーティションがないか確認

システムディスクの複製ツールによっては、予想しないパーティションが存在するとエラーになったり停止したりすることがある。これを防ぐため、予め複製するシステムディスク上のパーティションを確認する。以下のようなコマンドで確認できる。

diskpart
DISKPART> select disk 0
DISKPART> list partition

実際の出力は以下の通り。ここで示すように、通常は「システム」「予約済み」「プライマリ」「回復」の4つのタイプのみ存在するはず。この他のタイプが存在するなら、複製ツール作成元にそれが複製可能か確認することをお勧めする。

C:\Windows\System32>diskpart

Microsoft DiskPart バージョン 10.0.26100.1150

Copyright (C) Microsoft Corporation.
コンピューター: MY-PC

DISKPART> list disk

  ディスク      状態           サイズ   空き   ダイナ GPT
  ###                                          ミック
  ------------  -------------  -------  -------  ---  ---
  ディスク 0    オンライン          1863 GB  2048 KB        *
  ディスク 1    メディアなし             0 B      0 B
  ディスク 2    メディアなし             0 B      0 B
  ディスク 3    メディアなし             0 B      0 B

DISKPART> select disk 0

ディスク 0 が選択されました。

DISKPART> list partition

  Partition ###  Type                Size     Offset
  -------------  ------------------  -------  -------
  Partition 1    システム               100 MB  1024 KB
  Partition 2    予約済み                16 MB   101 MB
  Partition 3    プライマリ             1861 GB   117 MB
  Partition 4    回復                1000 MB  1862 GB

DISKPART>

■実際の複製作業

…を説明しようと思ってたんだけど、複製ツールによって全然違うから省略。 最近は複製ツールが有償になりつつあって、フリーでは難しくなってきてるのが残念。 自身は拙作DiskCloneを使っている。非常に便利だけど、一見さんには敷居が高いのが難点。

■おわりに

「全部自己責任」という原則において、皆様からの質問には基本答えない。 でも、ご意見や情報、誤情報訂正要求(根拠つき)などは募集中。 掲示板経由でも メール経由でも構わないのでどうぞ。