2025/03/19
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ケイジバン

pCloud導入記 for Windows

■はじめに

本文書では、大容量クラウドストレージpCloudをWindows 11に導入し、色々調査したりした記録を記す。

pCloudは、簡単に言えば、Google DriveやOne Driveの同類。インターネットの向こう側にでっかいストレージを確保でき、データ置き場として使ったりできるもの。詳細は上のホームページ参照。

■なぜ導入しようと思った?

データはずっと手元のNAS(Synology DS216j、4TBx2のミラーリング構成)で運用していた。 のだが、容量が手狭になったところで、色々考えたわけで。

これらを解決する方法は?と色々考えた結果、おぼろげながら浮かんできたのです…「クラウドストレージ」という文字が((C)小泉進次郎)。

■比較検討

クラウドストレージに対する要求使用はこんな。

で、こういうのを前提に早速クラウドストレージについて色々調べてみたのだが、世の中には結構沢山種類があることに驚いた。そして、5TB以上の大容量以上のものが少ないこと、結構お高いことにも驚いた。

種類容量価格情報導入判定
Google Drive(Google One) 無制限 1450円/月/2TB 言わずと知れたGoogleのソレ。安定性高く、Android端末との連携が楽
やや高価
One Drive ~6TB 2130円/月/1TB
2740円/月/6TB
MS謹製 ×
お高い
Dropbox ~9TB 1500円/月/2TB 老舗ストレージ
やや高価
Mega ~10PB(ペタ!?) 1343/月/2TB ファイル暗号化、ファイル内容に関わらずBANなし
pCloud ~17.5TB 9万円/買い切り/2TB 唯一サブスクではなく買い切り。アプリで P: ドライブとしてアクセス可能

最後まで、MegaとpCloudで悩んだ。散々悩んで、最終的にpCloudを選択した。理由は「買い切りなので長期運用するなら安いから」。Megaが買い切りだったら多分Megaを選んでた。というかサブスクじゃないサービスって本当に儲かるのかな…。

なにはともあれ、導入するクラウドストレージはpCloudに決定!

■pCloud購入時の注意点

先に述べたようにpCloudは買い切りなので、導入時に一度だけ支払いが必要。だがちょっと待て!絶対にセール時に買うのだ! セール時とそれ以外とでは、倍半以上の価格差があるんですよ!(2024/12現在、$1=150円として換算)

容量通常価格セール価格備考
500GB$299≒44850円$139≒20850円
2TB$599≒89850円$279≒41850円
5TBなし$499≒74850円通常時には5TBメニューがない。セール時のみ表れ、その時はなぜかセキュリティオプションが付加されている
10TB$1890≒283500円$799≒119850円

本当は6TB欲しかった。のだが、6TBはメニューに存在しない…。そういう柔軟性がないことはpCloudの弱点ではある。その時はセール中だったから5TB+2TBで7TB購入するという道もあったが、価格的には「Youもう10TB行っちゃえYo!」と誰かの声が聞こえたような気がしたので、男らしく10TBをドカンと購入。Download GoGo!で購入すると当時Amazonギフト1万円分が貰えるセールやってて、それで更にちょっとオトクになった。

購入後はすぐにアクセス可能になり、Windows上ではpCloudアプリをインストールすることでエクスプローラで P: ドライブとして使用できるようになる。

もし容量が不足した場合は、後から上の500GBとか2TBとかを追加購入することで、最大17.5TBまで容量を増加させることができる。その場合も引っ越しなどは必要なく、単純に使用してたストレージが購入直後から拡大される。

■使ってみてどう?

Windows上でしか使ってないという前提で言えば、大変イイ。 Windows上で使用する場合の特徴は以下のような感じ。

  1. pCloudで購入したストレージがそのまま P: ドライブになる
  2. I/Oは、読み込みも書き込みもキャッシュされる
  3. キャッシュはOS再起動しても継続される。ので、途中でOS停止・再起動してよい

このうち、「エクスプローラ上から P: ドライブとしてアクセスできる」のがとてつもなく便利。なんかWebアクセスしてドラッグ&ドロップすることなく、フツーにファイルとしてアクセスできるのが非常に良い。 とにかく楽。要らんことを考えなくてよいというのはスバらしい。

■I/O速度は?

I/O速度は、うちの環境だと上りも下りも平均すると4MB/sくらい。実際のI/O速度は変動が激しく、あまり安定しないようだ。数分間I/Oが停止するというようなことも時々起こる。 つまり、pCloudは大量コピーや同時並行のI/Oは大変苦手なダメッ子ちゃんなので、I/O完了を生暖かく見守れる紳士淑女じゃないと使うのは辛いかもというところ。

実際、手元の2.3TBのローカルファイルをpCloud上にコピーするには一週間ちょっとかかった。2.3TB/4(MB/s) ≒ 6.98(日)なので、概ね計算通り。これが一つの目安になると思う。

pCloud上の音声・映像ファイルを直接再生することは可能だが、当然最初数秒は(先読み分だけ)待ちが入るし、読み込み速度が間に合わない場合はカクつくこともある。でも4MB/sあれば、殆どの動画ファイルで不満はない。シークした時に引っかかることがあるくらい。

pCloudのマイページに速度計測ツールがあるが、これはあまり実速度を反映していないので参考までに。 この例では Down=16.51MB/s、Up=9.32MB/s 出ることになってるが、実際のI/O速度はまずそんなに出ない。

pCloudの速度テスト

なお、読み込み・書き込みキャッシュがあるため、エクスプローラ上でファイルコピーした時の速度やCrystal Disk Markで表示される速度はアテにならない。実際の実行中のI/O速度は、Up/DownともpCloudアプリの最下段に表示されるのでそれを参照。

やったぜ!pCloudは爆速だ!(うそ)

うちの平日昼間のネット環境は以下の通り、Down=543Mbps、Up=71Mbps 程度で、そこそこ高速。

USENスピードテストの結果

■リスク

pCloudには、格納するファイルによって、BANの危険性がある。詳細は以下を参照。

これによると、「ハッシュ値で禁止ファイルかどうかを判断し、該当したら問答無用でアカウントをBANする」模様。当該ファイルだけじゃなくてアカウントを削除。そうなるとつまりpCloudに置いておいたファイルは全滅で、二度とアクセスできなくなってしまう。万一の誤BANの可能性も否定できない。これは本当に頭が痛い問題だ。

だからpCloudを使うのはやめましょう…とはしたくない。重要なファイルはローカルにバックアップ取るようにすればなんとかなるんじゃないかなぁ、とは思う。それにしてもアカウントBANは酷いよね…せめて「ここいらへんのファイルがアレだったのでそのフォルダだけ削除した」とかならいいのに。諦めて付き合っていくしかないんだろうか。改善を求む。

BANを防ぐためにファイルを暗号化する方法を提案している方もおられる。こういうのは知識として知っておいた方がいいだろう。 ところで、どこかで「pCloudではパスワード付きZIPやユーザが暗号化したファイルはなぜか壊れる」というウワサを聞いたことがあるのだが、その真偽やいかに。

■実際pCloudアプリがどのように動いているのか?

ここからは、pCloud(for Windows)をしばらく使った上で判った内部情報的なことを備忘録的に書いていく。Webインターフェースなどについては触れず、あくまでWindows上で P: ドライブとして pCloud ストレージを使う場合に特化した情報である旨ご了承頂きたい。pCloudアプリのバージョンは4.1.12(2025/04/03現在最新)。

●概要

基本的に、Windows上の P: ドライブへのI/Oや同期・バックアップなどの機能は、pCloudアプリが担当している。Webインターフェースだけを使う場合は、pCloudアプリは無関係。

●キャッシュ

pCloudアプリはエクスプローラ上のpCloudへ・からのI/Oをキャッシュする。読み込みキャッシュと書き込みキャッシュを管理しており、以下のように実装されている。

●同期

pCloudの「同期」は、あるローカルフォルダとpCloud上のフォルダの内容を同期する機能で、一般的なクラウドストレージが持っているそれと同等のもの。以下のような特徴がある。

  1. 同期はpCloudアプリが行っており、同アプリが停止中は同期は実行されない
  2. 同期はバックグランドで実行され、同期中の動作の進捗や詳細を確認することはできない
  3. 同期では読み込み・書き込みキャッシュは使用されない
  4. 同期中にファイルを削除・移動した場合、「ファイルがない」とアプリが警告を吐く
  5. 同期中のファイルは一時的に書き込みロックされる
  6. 運悪く書き込みロック中のファイルを編集しようとすると「アクセスが拒否された」とエラーになる
  7. その場合は暫く待って同期が完了するとロックが解除され編集可能になる
「同期中のファイルは書き込みロックされる」のがなかなか痛くて、例えばドキュメントフォルダを同期している時、あるファイルを編集中にたまたまそのファイルが同期対象になると、ユーザが同ファイルを保存しようとしてもエラーになってしまうことがある。しばらく待てばよいのだが、焦ってセーブせずアプリを終了したりすると悲しいことに。こういうことが何度か起った結果、同期機能を使わなくなってしまった。

また、現状では同期機能は一時停止することができず、「同期させるかその同期を削除するか」しかない。ユーザによるファイル編集時は同期を停止し、暇な時に同期開始して…のような運用ができないので、ますますこの機能を作業中に使うことが難しくなってしまっている。これはpCloudアプリ側でなんとかできる問題なので、改善を期待する。

●バックアップ

pCloudの「バックアップ」は、指定したバックアップ対象フォルダを、P: 上に作成した「pCloud Backup」というフォルダに保存する。実際には「同期」と同じ仕組みで実装されている模様。 従って、進捗確認はできないし、バックアップ中のファイルは書き込みロックされるのも同じ。

pCloudのバックアップとは直接関係ないが、これは情報までに。Windows 7互換バックアップ(コントロールパネル→[バックアップと復元(Windows 7)])のバックアップ先として P: が選択可能。リカバリ時に困ることになるかもしれないが、OSの全体バックアップの保存先としてクラウドストレージが選択できるのは(容量的な問題で)大変助かる。

■総評

まとめると、pCloudは、「P:ドライブとしてエクスプローラから使えるのがスゴい便利。ただしI/O速度は低く不安定で、ローカルドライブ同等とはいかない。バックアップ先や使用率の低いデータの保存先など、割り切った運用なら充分実用可能」というところ。

一方、「売り切り」という剛毅なビジネスモデルは、ユーザからすると大変に有難い。 是非これからも頑張って商売を続けて頂き、アプリやI/O速度の改善をお願いしたいところ。