本書は、BD-1の折れたボルトをなんとか引き抜くまでの七転八倒を記録する ものである。 モノスゴ苦労したので、皆様には是非参考にしていただき、同じ轍を踏まないように していただきたいと心から願う次第。
写真が一枚しか無いのはご容赦。今回は記録しそびれました。
折れたのは、リアスイングアームの軸を固定するφ5mmボルトの片方、頭が出てる方。 写真の赤丸の方。この写真は修理後のものだけど。
ここは水ハネなどで腐食しやすい箇所。それなのにフツーの鉄ボルトだから、 整備を怠るとあっという間に錆びる。ただ錆びるだけじゃなく、 ネジの内部がスイングアーム(アルミ)との電位差でガッチリかじりつく。 そして、いざ外そうと思った時に、頭がぽっきり折れる。 それはもうあまりにもあっさりと。そして困る。どうやって外したもんか。
最初我輩にはこれをどうにかする方法が思いつかなかった。だもんで、 まぁ片方だけだし、機能的には問題ないし、じゃぁ放置しといていいかー、 ということで、そのまま四年放置、1万kmとか走ってしまった。 本当に特に不具合はなかったのだ。…がしかし、四年も経ってから後悔した。 これを安全に外して再度固定できるようにしないとスイングアームが分解できないし、 頭が折れた状態だと地面からの衝撃で軸部がmm単位で動いて、 そのうち疲労してスイングアーム軸受けが折れてしまうかもしれない。 そんな恐怖が頭をよぎるようになった。
皆様におかれましては、そんなことになるのを防ぐために、 特に錆びたボルトは慎重に回すことをお勧めする。 それはもう慎重に。折れちゃうとホントタイヘンだから。
折れてしまったものをなんとか外すために、我輩が試したことを以下に。
ホント長い戦いだったわー。
なお、「締めてる最中に折れた」のと、
「緩めてる最中に折れた」のは、後者の方が断然難易度が高い。
ボルトの頭が折れるほどガッチリ食いついているからで、こうなると
エキストラクタですら回らないことが多いことは知っておくこと。
まずは、ネジ部分にCRC-556やらを大量に吹きかけ、一晩放置してネジ山に浸透させる。 運がよければ、これだけで残ったボルトが手で回せたりする。 ただ、カジっちゃったネジはこんなことしてもどうにもならないので、 次の手段を考えなければならない。とはいえ、最初に試すのはコレ。
折れたボルトの頭がネジ穴からちょっとでも出てるなら、ネジザウルスがお手軽最強。 これでつかめれば、大抵のネジは回せるし外れる。 DIYのお店で1800円ちょっとでフツーに入手できる上、 モノとしてもペンチっぽく使えるしとても便利なので、事前に入手しておくことを 強くおススメする。
しかし、 今回は頭がネジ穴から出てなかったので、コレでは手も足も出ないのであった。
ボルトの頭が出て無くても、BD-1の当該箇所は金ノコで溝を作ることができるから、 それを足がかりにマイナスドライバーをツッコんで ボルトを回すことができるようになるんじゃないか。そう思って、スイングアームを 1mmほど削るのは涙を呑んで許容し、金ノコを引いて溝をつけた。 上の写真でも溝が彫ってあるのが確認できるだろう。 マイナスドライバーをツッコんで回してみる……回らない! 全力で回すが、ピクリとも動かない! 多くの場合はこれで取れるはずだが、 今回はガッチリボルトがカジっちゃってる模様で、 全く動く気配がないという…。ノゥ。
ショック(インパクト)ドライバってこんなもの(これは安心の日本製)。 金鎚で叩くと、ビットが締める・緩む方向に少しずつ回って、 食い込んだ鋼鉄製の歯がネジを回すというもの。 無くなったネジ頭もビットが作ってくれるため、 少々カジってても、コレならば大概折れたボルトは回る。 今回は5mmボルトだったので、 スリムタイプ(Amazonリンク)の歯を使った。 結構強く叩かないとダメだけど、これで外れないなんてことは滅多にない。
…んだが、今回は外れなかった。叩いても叩いても頭が壊れていくだけだという。 どんだけカジっていたのか。
エキストラクタってこんなもの。上と同じ会社の日本製。 折れたボルトの中心に下穴を開けて、そこに逆ネジであるところのコレをねじ込むと、 逆ネジ部分が折れたボルトにガッチリかみ合って、ネジが緩む方向にくるくる回せる ようになるというアツいツール。 下穴(深さ5mm程度)を、残ったネジ中心に垂直に開けなければならないという 厳しい条件はあるものの、 なんせ新しいボルト頭をつけるようなものだから、 ショックドライバで回らなくても、コレで回らないなんてことはまずない。 これが本当に最終兵器だッ!
…のはずだったんだけど、やっぱり今回は回らなかったという。 ムリに回そうとしたら、エキストラクタを固定している 2.5mmイモネジが壊れてしまった…。どんだけカジっているのか見当もつかないよ! しかし、エキストラクタが折れなかったことは逆に僥倖だった。 折れちゃうと(エキストラクタはモノスゴ固いため)もうプロでないと 取り出し不能だからさー。
結局、今回我輩はコレで対処した。これが最後、本当に最後の手段。 電動ドリルで、残ったボルト中心にφ2.5mmくらいの小さな穴を貫通するまで開け、 別のドリルでそれをφ4.0mmくらいまで広げる。 その後、5mmタップを使って、残ったボルトを破壊しつつ再度ネジを切る。 これで、残ったボルトは取り除かれ、かつφ5mm用のボルト穴が復活する。
そんなうまくいくかー?と思ったあなたは正しい。実際、モノスゴ難しい。 正確に残ったボルトの中心を貫通させる穴を開けねばならず、 ななめになったらもう二度と復活はできない。 アルミ材への複数回のネジ切りなんて信頼できない、だから 一回り大きなタップを切りなおすという方法もあるにはあるが、 今回はスイングアーム側の幅がギリギリなので、φ6mmのネジは切れないと判断した。 だから、本当にこれはイッパツ勝負。
まっすぐに穴を開けるのは、本来ボール盤とかの仕事だ。
大きなボール盤があれば、分解したスイングアームを上手に固定しつつ穴を空ければ
よいが、そんなのパンピーは持ってないだろう。我輩も持ってない。
仕方ないので、ネジ穴の外形をペンでスイングアームに描き、
それに沿って手動でドリルを固定しつつ慎重に穴を開けるという方法を採った。
一歩間違えばどうにもならなくなるところだったが、今回は奇跡的にうまくいった。
残ってたネジは長さが13mmくらいあったが、上手に中心を射抜くことができた。
今回は、ドリルとしてリョービのドライバドリル CDD-1020を使用した。
made in chinaだけど、低速が使いやすいし回転軸の精度もまずまず、なにより
充電式じゃなくてバッテリがないのが気に入った。DIY用途では、「すぐ使える」と
いうことが何より大事。
バッテリが消耗して使えなくなったらもったいないし面倒だしね!
ブラシが消耗することはあるらしいが、それは安価でフツーに入手できる模様。それだ!
トルクは十分だが、結構上から強く押さえないと歯が入っていかなかったので、
ドリル歯が折れないようにご注意を。
一度中心を貫通してしまえば、あとはそれをガイドにφ4mmまで穴を広げるのは簡単。 その後タップを切りなおすのもそんなに難しくはない。 タップをねじ込むたびに、「パキッ!…パキパキッ!」とかいって頑固だったボルトが 破壊されていく音は快感ですらある。
ということで、約一時間かけてこの作業は完了、見事スイングアームのネジ穴(山)を 同径で復活することができた。やったね!
やっとネジ穴が復活したので、以下に注意しつつ新しいボルトをネジ込んで スイングアーム軸を固定。これで再発が防止できる…と信じたい。
スイングアームが左右ガッチリ固定されるようになると、BD-1の走りが変わった。 踏み込んだ時の剛性感が向上し、同じ力で踏んでも進むようになった。 最初プラシーボかと思ったんだが、どうやらそうではないらしい。上り坂だと その違いが顕著に判る。 やっぱり、ちゃんと固定しておかないと、力が少しずつ逃げてしまっていたようだ。 うわー四年間損したー!
というわけで、ボルトやネジの頭が折れた時に残ったネジ部を取り除く方法を 色々述べた。世の中には様々ツールもあるが、最終的には力技が一番有効だった というのがなんともはや。 皆様も、折れたネジがあるなら、なるべく早く対処することをおススメしますよ! 放置すればするほど、カジりは進行しちゃうからね!
というか、実はやっぱりプロに頼むのが一番ですよ!(そんなオチか)。
あともう一つ、一つ大きめの穴を開けてヘリサートをねじ込むという手段も あるんだけど、まぁそれはBD-1ごときで試す方法じゃないよね、ということで省略。
是非先人の知恵に学ぼう!