2011/08/16
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※SPAM防止のため捻ってある

BD-1: 異音と戦う

■はじめに

BD-1はとにかく可動部分が多い。その上価格のワリに安い部品を使ってたり、 ちょっと特殊な形してたり、工作精度が悪かったり、初期状態では組み付けに あまり愛がなかったりして、可動部分ごとにギコギコガンガンギシギシ 異音がする。それはもう異音まみれと言っても過言ではない。 不必要なまでの品質重視のゲルマン魂は一体どうしたんだR&M。 そんなんじゃ日本製品には勝てないよ!

で、ちゃんとショップで調整してもらったとしても、BD-1にしばらく 乗ってるとギシギシアンアンしてくるので、その原因を探してみんなが 右往左往するのであるが、さすがにインタァネットを探すのも疲れたよママン、 という方(含む自分)のために、ここにひとつ纏めておく所存ナリ。 参考になるなら僥倖。

上から順番に「異音が発生しやすい箇所」になっている。

※ご要望があれば、各部の調整方法の詳細画像を追加していきます。

■1. ハンドルステムの折りたたみ部

最も異音の発生源としてメジャーなのはコレ。立ちこぎしたりハンドル引いたり したときにギチギチ…というかもうなんか折れるんじゃないかというくらい ガンガン金属を叩く音がするなら、ここはチェックしよう。

チェックするのは、折りたたみレバーの締め付け具合。調整方法は以下の手順で。

  1. レバーを解放する
  2. レバー反対側のナットを少し緩める
  3. レバー根元の調整ねじを少し締める
  4. 再びナットを締め直す

こうやって少しずつ折りたたみ部の固定力を強くしていく。ちょうどいいのは、 手でレバーを倒す時にちょっと強めの力が要るくらい。全力で「ぬぉぉぉぉ!」 とやらないとダメなのは強すぎ、パタンと難なくセットできるのは弱すぎる。 色々やって、ちょうどいいところを探そう。

ここの調整で、かなりの確率で異音は減少する。騙されたと思ってやってみると よろし。まぁ大概騙されるのであるが(え?)。

■2.フロントフォークヒンジ

異音発生源の次の最右翼はここ。この部分、よーく見ると判るが、プラスチックの ブッシュをヒンジに打ち込み、左右からボルト止めしてある。このプラスチックと フォークがこすれてギシギシ音がする。ここはもう構造上音がするもんだと 考えるしかない。リアはちゃんとボールベアリングになってんだから、ここも ボールベアリングにすりゃよかったのに、と思わなくもない。

ここのボルトは8mmヘキサレンチで緩めるが、「外側からしか緩められない」ことに 注意。内側(タイヤ側)はボルト頭下にある突起がフォーク側の切り欠きにハマって いるので、内側は回せない。逆に言えば、内側を押さえることなく外側を回すことが できるんだけど。

分解したら、軸部分は外側ボルト、ワッシャ、内側ボルトの三パーツがあるのが判る。 ワッシャを無くさないこと!時々ブッシュ内に残っちゃうので、それも見逃さない ように。

で、ブッシュ周りにこれでもかとグリスを塗る。溢れてもいい。ブッシュ外側の フランジ部分がフォークとこすれることで音が出てるので、とにかくこの部分に 油が乗るようにすること。当然ボルト周りにも入念に。これで組み上げれば、 異音が劇的に改善している!…といいなぁ。

おまけ。ベアリング交換は そんなに難しくないし効果も大きいと思うので、交換できた人は是非教えて欲しい。 我輩は正確なサイズが判らんから変更できないのよね。プラスチックブッシュを 抜く時は、ベアリングプーラーか何かがないと簡単に割れちゃうだろうし。
…みんな知らないかもしれないが、一般品のベアリングってびっくりするくらい 安いのよ。一個200円とかそんな。日本製でも500円も出せば十分なものが買えるので、 ベアリングに興味がある人は、是非アコガレの日本精工(NSK)とかNTNとかのを ゲットだぜ!

■3.サドルやぐら(取り付け)

音が出るのに調整が難しいのがここ。ダンシングすると音が収まるなら、ここか 次のシートピラーが原因のことが多い。

しかし、正直解決策はいまいち。締め付けを確認すればいいんだけど、 なんせBD-1のサドルやぐらは特殊な形で、 あまり強く締め付けると 結構簡単に破損する( もう一例)。サドルレールややぐらをバラして、各部品に薄くグリス塗る、 くらいしか対策を思いつかない。最近入手が難しくなったが、ワンフィクション シートピラーがあれば問題は解決すると思う。 しかし、ワンフィクションシートピラーって高い(12000円くらい)んだよねぇ…。

■4.シートピラー

ダンシングすると音が収まる(小さくなる)ならここも調べる。シートチューブに シートピラーを差し込むところね。

しかし、ここもこれぞという解決策はない。原因はシートピラー固定クイックの 締め付け不足と、シートピラーの精度不足、フレームの精度不足のいずれか。 クイックは、 締め付けすぎるとフレームが簡単に破断してしまうので注意。 シートピラーに薄くグリスを塗ってもよいが、そうするとグリスが汚れてきて 折りたたむ度に手が汚れたりするのでできれば避けたい。 …やっぱりワンフィクションピラーに交換するってーのがいいんじゃないか?と 思わなくもない。フレーム精度がアレだとどうしようもないけれど。

チタンスプレーかければ汚れないという話もあるけれど…。

■5.ヘッドパーツ

ここがギシギシ言う時は、その前に締め付け具合を調整してみよう。フォーク側の クランプボルトx2を緩め、ヘッドの締め付けボルトを下から締める。締めすぎると ヘッドのベアリングが痛むので、ハンドルを前後にゆすって「ベアリングの上玉受けが 前後に動かない程度」に締めるのがよい。また、クランプボルトx2を締めすぎると、 今度はフォークが破断する (もうひとつ(中ほど))という危険が。ちなみにBD-1のフォークは、 交換時は新品で5万円ほどかかるそうですよ奥様。高ぇ!

それでも音がするなら、今度はヘッドのベアリングのグリスアップ。BD-1の ヘッドパーツはびっくりするくらい安い部品を使ってるので調整幅とかないしすぐ 噛み付き跡ができたりしてどうしようもなかったりするのだが、この部分をちゃんと 調整すれば、とりあえず音は出なくなる、はず。

あと、可能ならヘッドチューブのフェイシングをショップでやりなおしてもらうのも 吉。元々販売したショップがよほど良心的でなければ、最初の組み付けは極めて イイカゲンでフェイシングなんか絶対やってないので、これだけでもずいぶん違う。

…でも、正直オススメはヘッドパーツをちょっとイイのに交換すること。 MORTOPというメーカーの BD-1用ヘッドセットは、専用設計だけあってロゴもちゃんと上下逆にならないし 取り付けも結構簡単、価格もリーズナボー。 ただ、ヘッドパーツ抜き+圧入(ついでにフェイシングも)は、ショップで やってもらった方がいいと思う。素人が自前でもできなくはないけど、 色々不都合がね、あるからね。経験者はかく語りき。

え、クリスキング?いやまぁ…お金がある人ならそれがいいんじゃない…? (※クリスキングのヘッドパーツは市場で最高級、20000円くらいします)。

■6.BB

BBもよくギシギシ言う。まぁ…とりあえず締め込みを確認するのと、クランクの フィキシングボルト締め直し、くらいがやるべきこと。とはいえ、ここもなんか お安い部品を使ってるので、どうしても異音が消えないのであれば、交換も 視野に入れるべき。ただ、スクエアテーパーのBBって最近入手難しくなって きてるんだよね…。
これも、可能ならBBのフェイシングをショップでやりなおしてもらいたいところ。

思い切って、クランクごとシマノやらのホローテックII用のに交換しちゃうというのが オススメかも。でもその場合はチェーンラインを確保するためにまた一工夫必要に なったりして、ああ難しい。

2011/09/23追記。クランク周りの異音は、実はペダルから発せられていることもある。 シマノや三島のペダルならそんなことは皆無だが、なんか知らん安いペダルを使って いる場合は要注意。我輩もどーしてもわかんなかって散々グリスアップやBB交換まで やった末にやっと見つけた異音発生源が、「なんか知らん安いペダル」だった。 バラしてベアリングのグリスアップをしたら、完全に異音が消えた。クランク まわしていると、ペダルの異音には気づかないし、負荷をかけないと鳴らない場合も 多くてなかなか発見は難しい。どーしてもわかんない場合は、ペダルも疑ってみよう。

■7.ブレーキ

でこぼこ道を走るとコツコツ音がして、ブレーキかけると音が収まるなら まずこの部分が元凶。純正のブレーキは精度が悪くて、なんというかフレーム側の Vブレーキ取り付け金具がちょっと長くてブレーキ側の穴がちょっと大きいから、 ぎゅっと締め付けてもカタカタしちゃうのです。うわー字で書くと判りにくーい。

で、解決策は以下のとおり。

…なんだけど、まぁそのアレだ、XTRとかのブレーキに変えちゃった方がぶっちゃけ 早いし確実だ、とかは言わぬが吉。

■8.リアサスヒンジ

正直に言おう、この部分から異音が出るなら、ショップに持ち込みなされ。自前で 直すのは相当に困難だと思う。実際難しいのは以下。

一応交換部品は出てるが、こういう事情があるので、個人での交換はオススメ できない。よくできてもグリスアップ程度。 個人で交換した 例はあるようだけど…なんかタイヘンそう…。

■9.前後ハブ

案外見落とされがちなのがここ。ハブのグリスアップというと一般的な作業だけど、 思いのほか実施してない人が多い。是非やりなさい!ただでさえBD-1のような小径車は タイヤの回転数が多くてハブやらなにやらに負担がかかるから、マメにチェック しなければならないのですよ。

ハブのグリスアップ方法は普通のMTBやロードのそれと同等なので、ここでは 具体的には述べない。このくらいは自前でできるようになっとかないと、 BD-1乗り続けるなら苦労するですよ。

■10.各種ケーブル

BD-1はブレーキにしてもなんにしてもケーブルがやたらと長い。ので、これらを いいアンバイに固定しとかないと、路面の凹凸を拾った時にケーブルがフレームに 当たってカツンカツン音を立てる。当たる部分を見定めてフレームにテープを貼って おくもよし、ケーブルが動かないようにタイラップで固定しておくもよし。

■総評

結局可動部全部かよ!と言われるとまぁそうなわけで。いずれにしても、どこから、 どういう原因で音がしているかを見(聞き)極めるのが大事。周囲に誰もいなくて安全 なことを確認した後、走行中に頭を下げて異音発生場所を特定するのが まずその第一歩でありましょうな。

ああもうそれもこれも最初に述べたように、 最初からついてるパーツが分不相応に安くてあんま良くないのとか フレーム精度が悪いのとかが元凶。ということは、フェイシングなどでちゃんと 精度を出し、部品をちょっとイイのに交換してやれば、多くは解決可能ということだ。 しかし、これはつまり、BD-1整備には手(と金?)がかかるということと同義なわけで、 まぁ…シティサイクル用途以外で使うなら趣味でしか乗れん自転車だわな、という 証左でもあるわけで。

正直、走りを楽しむための自転車が欲しいのぜー、という人にはとてもオススメ できない自転車ですBD-1は。そういう人は絶対ロードバイク買った方がいいって! 我輩でさえ、ロードで本気で走った時とBD-1で本気で走った時で、サーキットレースで Avg.で6.2km/hの差があったんだから。

だけど、自転車に「ダメな子を少しずつ矯正していくのが楽しい」という マゾヒスティックな楽しみをお持ちな方にはモノスゴオススメ。手(と金?)をかけた分 確実によくなっていくからね(ある程度以上はムリなんだけど…)。 整備好きな人なら…BD-1はイイ自転車ですよいやホントに。