2025/11/21
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ケイジバン

「折り畳んだらエンド金具になるリアキャリア」の制作

■はじめに

本文書は、「折り畳んだらエンド金具になるリアキャリア(Ver3.5)」の制作に関するメモである。

なお、本作では輪行とは縦型であって、横型ではないことに留意されたし。エンド金具が出てくるんだからワカルダロ的な。

■作ったもの

最終的にできたものはこんな感じのもの。折り畳める支柱の上にTopeakバッグ用のレールを搭載し、加えて末尾にエンド金具になるオマケをくっつけたもの。

キャリア部分の重量は766g。一方Topeak MTX Beamrack + エンド金具(クイックなし)は764gなので、ほぼ同じ。 後述するメリットを考えると、導入は十分アリだと思う。

折り畳むとこんなカンジ。折り畳む時は前三角の頂点を支点として支柱が回転し、エンド金具部分がそのまま後輪車軸部分に移動、クイックで締め付けることでガッチリ固定される。まずズレたり回転したりしないので、リアディレイラーが確実に保護できる。そして接地部分の幅が広いので自立可能。

このキャリアで既に列車輪行・飛行機輪行をそれぞれ複数回ずつ、加えて付けたままビワイチなども経験しているが、今のところトラブルはない。

■メリットとデメリット

このキャリアを導入するメリットは以下。

特に拡張性が高いのは便利。現在はボトルケージや空気入れを追加で取り付けている(取り付けたまま輪行可能)。将来パニアバッグを付けたいなーとかになっても、簡単にステーを増設可能。

一方デメリットはあまりない(…と思う…)。無理に挙げるなら以下くらい?

これらが呑める人にはとても良いキャリア+バッグの選択肢になると思う。


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↓ ここから下は「作る人」のための情報 ↓

■制作の動機

とにもかくにも「輪行の手間がめんどくさい!」というのが動機。TopeakのBeamrackを愛用し縦型輪行で旅行している身からすると、輪行とは以下のような手間がかかるものであって。

  1. エンド金具組み立て
  2. キャリアやボトルや空気入れをフレームから外す
  3. 前後タイヤを外す
  4. エンド金具装着
  5. 自転車を立てる
  6. タイヤをフレームに沿わせて配置
  7. タイヤを縛る
  8. フレームに担ぎ紐を付ける
  9. 自転車を輪行袋に入れる
  10. キャリアやボトルや空気入れを輪行袋に放り込む

長ぇ!そしてキャリア等は固定してないで放り込んでるだけなので、輪行袋中でガッチャガッチャ動いて色んなものを傷つけてしまう。加えて、通常のエンド金具には以下のような弱点があって、コレも輪行時に困る。

特に二番目。リアディレイラーを保護するために付けるのに、役に立たないことが多いというか。

これらをなんとか解決するワンダホな方法はないものか?とずっと考えていた。で、最終的に「折り畳んだらエンド金具になるリアキャリア」を作ればいいのではないか、と思い至ったのであるよ。

■制作方針

汎用のリアキャリアを完全に0から作るのは難しい。ので、今使ってるTopeakのMTXトランクバッグDXが載せられるようなものを考えた。 つまり、Topeak MTX Beamrackの代替品のようなものを作ることにする。可能ならパニアバッグ搭載のためのレールや、マッドガードを後付けできるような仕組みも同時に考える。

支柱がなくサドルに直接括りつけるタイプの大型サドルバッグがあるのは承知している。そっちの方が軽量だし。けれど、アレは以下が難点で、今回は却下。

なので、最終的には、TopeakのBeamrackを発展させたようなキャリアを作ることにした。 「エンド金具になる」「折り畳める」「バッグの取付取外しが楽」などの要求仕様を満たすため、以下の3パーツで構成する。

  1. 前三角 ... フレームに固定してキャリア本体を支え、折り畳み時には本体の回転軸を提供
  2. 本体 ... 支柱+Topeak MTXトランクバッグ用のレール
  3. エンド金具部 ... 本体末尾にエンド金具っぽいものを固定

モノとしてはかなり単純。前三角は三角形であるが故に丈夫だし、カーボン板を導入すれば強 度を保ったままある程度の軽量化も実現可能だろう、と期待。

■材料

実際のモノは上で述べた通り既に完成しているので、ここでは必要な材料をざっと列挙する。ネジ類は全て揃ってるかどうか不明なので、作りたい方は臨機応変に。本当は試行錯誤の跡とかも残した方がいいのかもしれないが、モノスゴ長いこと試行錯誤してて全部書き出すのさすがに面倒なので残さない。各サイズは今回の自転車に合わせているため、皆様がお使いの自転車用には微調整が必要かもしれない。

名称サイズ個数価格備考
アルミフレーム 20x20 1000mm 1 1400円+250円(カット代) 今回は本体としてS-Funを使った。 実際には、1000mmから以下のサイズに切り出して使用する。切り出しは、購入したDIY店のカットサービスを使うとよい。DCM稲城押立店は1カット50円でやってくれるので大変助かった。
  1. 10mm x2 +Φ5mm 貫通
  2. 40mm x1 +両端M5ネジ切り深さ10mm
  3. 130mm x1 +Φ5.4mm 貫通
  4. 160mm x1 両端M5ネジ切り深さ15mm
  5. 500mm程度 x1 本体ステー。後に長さ調整が必要だろうから、まずはこれ以外を切り出して余ったものをそのまま使うこと
今はこういうフレームを売ってくれるDIY店が少なくなってしまった。秋葉原の千石通商本店2Fの隅っこでも売ってるけど、そちらはカットなしなのよね…(そんかし5cm/10cm/15cmなどのサイズで切り売りされている)
アルミフレーム用のコネクタキット - 1 1515円 上のアルミフレームを固定したりなんだりするためのもの。
SFunDブラケットSSタップ付GFun STナットSS M5を買ってもよかったのだが、重量や価格の面でこちらの方がよさそうだったので、こちらにした。なおGFun STナットはアルミフレームに食い込むように凹凸があり、これが「ナットの位置固定には有効だがフレームを傷つける」ので注意。一方こちらのキットのナットは、精度はイマイチだがアルミフレームに食い込むような凸凹はなく、フレームに優しい。ただしステンレスではないので錆に注意
ダボ穴付きシートクランプ 自転車のシートクランプに合わせたサイズ 1 1500円 前三角の一端の固定用。今回はGIZA PRODUCTSのΦ34.9mmのものを買った
ダボ穴付きシートクランプ(不要なことも) 自転車のシートポストに合わせたサイズ 1 1500円 前三角のもう一端の固定用。自転車のちょうどいい位置にダボ穴があるなら、それを使えばよいので不要。今回の自転車にはダボ穴がないため、シートポスト上にダボ穴を新設するために用意。
今回は SPC リアキャリアシートポストクランプ ブラックを購入。シートポストが31.6mmなので、Φ31.8mmのものを入手。このフランジ部分をヤスリで削って、シートポスト中段にクランプし、ダボを増設する
カーボン平棒 2.0x20x500mm 2 2374円/2本 前三角やエンド金具部の「×」など、アルミフレームの固定に使う。最初はユニクロ金具だったのだが、軽量化のためにカーボンを使うことにした。
以下の6パーツに切り出す。全部160mmなのは偶然。
  1. 160mm x4 前三角:シートポスト・シートクランプから伸ばしてアルミフレーム固定用
  2. 160mm x2 エンド金具部:固定用の「×」
M5x20mmステンレスボルト - 4 50円/本 前三角の回転軸部分のボルト(x2)、及びアルミフレーム末尾の当たりゴム止め(x2)
M5x10mmステンレスボタンキャップボルト - 6 30円/本 前三角のカーボン棒をシートクランプに固定するボルト。ボタンキャップボルトなのは少し軽いから
M5貫通ノブナット Φ30mm 1 145円 回転する本体の、折り畳み前の固定用
M5x40なべネジ 1 80円 上のノブナットと組み合わせて、回転する本体の固定用
Topeak OMNI Quicktrack Adapter - 1 2750円 MTXトランクバッグを載せるための土台として
M5x14mmステンレス皿ボルト - 4 30円/本 Topeak OMNI Quicktrack Adapterをアルミフレーム(500mm)に固定するために
当たりゴム Φ30mm程度 2 150円/個 輪行時の接地部分の保護に。少し重い。もっと軽くて丈夫なものがあれば…
総額 12314円 高ッ!実際には色々試行錯誤してるので、総費用はこの三倍くらいかかっている

■組み立て方

写真見てテキトーに組み立ててネ!でもいいんだが、色々注意点とかもあったからメモを残しておく。とはいえ、こんなの実際作ってみないと文章読んだだけじゃ理解できんですよね知ってますよモゥ。

●前三角

自転車のフレームと本体(アルミフレーム)を接続する前三角は、2x20x160mmカーボン平棒四枚から構成される。

  1. シートポストに固定するシートクランプは、フランジを慎重に削ってシートポストを無理なく挟めるようにする
  2. 1.をシートポスト中ほどに固定、
  3. 自転車のシートクランプをダボ穴付きのものに交換。これでダボ穴が都合4つになる
  4. カーボン平棒の両端から10mmの部分にΦ5mmの穴を空ける
  5. シートポスト・シートクランプに、M5x10ステンレスボタンキャップボルトで固定する(4箇所)

●エンド金具部

エンド金具部分は、アルミフレームとカーボン平棒を組み合わせて作成する。アルミフレーム(160mm)がエンド金具の接地部分を、カーボン平棒の「×」がエンド金具の高さを、アルミフレーム(130mm)がエンド金具のシャフト部分をそれぞれ担当する。

  1. アルミフレーム(130mm)の貫通穴を、Φ5.4mmに広げる。これにクイックが通る
  2. アルミフレーム(160mm)の貫通穴を、両端からM5で深さ15mm程度ネジ切り
  3. アルミフレーム(160mm)の両端に、当たりゴム(Φ30mm)をボルト(M5x20mm)で固定
  4. アルミフレームコネクタキット中のコーナーブラケットを利用して、アルミフレーム(500mm)末尾にアルミフレーム(160mm)をT字型にネジ止めする
  5. カーボン平棒の端から10mm部分および中心部分にΦ5mmの穴を開ける
  6. 二本のカーボン平棒の中央をM5ボルトで固定し、クロスする
  7. M5x8ボルト+スロットナットでアルミフレーム(160mm)の後ろにカーボン平棒をネジ止めする
  8. 同様に、M5x8ボルト+スロットナットでアルミフレーム(130mm)にカーボン平棒をネジ止めする

今回はクイックシャフトをベースにしているので車軸部分はアルミフレーム(130mm)にΦ5.4mmで貫通穴をあけたものになっている。もしスルーアクスルに対応させるなら、アルミフレーム(130mm)を適当なもの(142mm)に変更する必要があるだろう。

カーボン平棒は写真のようにクロスさせる。ネジ止め位置を調整することで、エンド金具の高さ(=アルミフレーム(160mm)とアルミフレーム(130mm)の間隔)を変更することができる。これにより、ロングゲージのリアディレイラーだと地面に当たる、のような問題を回避可能。

●前三角とアルミフレームの固定

ここからは位置調整が必要になるため、自転車を、後輪を外した状態で吊り下げ式のメンテ台に固定して作業することをお勧めする。

  1. アルミフレーム(10mm)の貫通穴をΦ5mmに広げる
  2. アルミフレーム(500mm)の左右溝にスロットナットをひとつづつ挿入
  3. M5x20ボルト→前三角の頂点重ね→アルミフレーム(10mm)→2.のナット の順に仮固定
  4. 本体を回して、エンド金具部がちょうど自転車の後輪車軸部分にクイックで固定できるよう、仮固定部分の位置を調整する。
  5. M5x20ボルトを本固定

この状態で、リアキャリアは折り畳んだ状態になっており、縦置きにできるはず。実際に縦置きしてみて、リアディレイラーが地面に付かないか、どこか干渉するところはないか、不具合はないかなどを確認すること。 アルミフレーム(500mm)を前三角の頂点を軸に回転させ、長すぎる場合は前側を少しカットする。

●アルミフレーム(500mm)の位置決め

アルミフレーム(500mm)は、地面と平行になるように固定する必要がある。固定には、 前三角の左右に渡したアルミフレーム(40mm)を使う。ここも現物合わせが必要な箇所。

  1. アルミフレーム(40mm)の貫通穴に、M5でネジを切る
  2. アルミフレーム(40mm)の中央に、Φ5mm穴を縦に開ける
  3. アルミフレーム(40mm)にスリットナットを一つ入れ、中央部(2.の穴の上)に適当に固定。私は黄色いマスキングテープを丸めて詰めて動かなくした
  4. アルミフレーム(500mm)の先端の「いいところ(要調整)」に縦に貫通穴を開ける。これと2.、3.の穴が合うようになる
  5. M5貫通ノブナット+M5x40なべネジを組み合わせてノブネジにする
  6. アルミフレーム(500mm)の4.の穴にノブネジを通し、その下にアルミフレーム(40mm)をT字型に接続して締め付ける
  7. アルミフレーム(500mm)を地面と平行になるまで回転させる
  8. 前三角にアルミフレーム(40mm)を固定するために、前三角の左右から適当な位置にΦ5mmの穴を空ける
  9. 左右の穴からM5x10ボルトでアルミフレーム(40mm)を固定する

自転車に合わせて調整が多すぎるのが難だが、これで、アルミフレーム(500mm)が前三角に固定できた。輪行の時は、ノブネジを外してアルミフレーム(500mm)を回転させることで、エンド金具部のクイックを通す穴が「ちょうどいい位置」、即ち自転車の後輪車軸部分くるはず。

どうしてもアルミフレーム(500mm)が水平にならない場合は、シートポスト上のクランプ位置を少し上下させることで角度を調整することができる。

あとは、M5x14の皿ボルトx4で、アルミフレーム(500mm)にTopeak OMNI Quicktrack Adapterを固定するだけ。アルミフレームの負担を軽減するには、できるだけ前よりに付けた方がよい。現物合わせでどうぞ。

写真のアダプター上の茶色いものは、ダイソーで買った「すべるシール」。そのままだとTopeakのバッグがカタカタ遊んでしまったので、隙間を埋めるために貼った。このあたりも現物合わせなので、皆様の環境に合わせて調整してくだされ。

■今後の改善点

アルミの溶接ができるなら、あと3Dプリンタで小物作れるなら、もう少し軽量化はできそうな予感。一方、アルミフレーム(500mm)を別のものに変えてどうこうするのは強度的に難しそう。カーボンチューブで代用できないか考えた(というかチューブ買った)のだが、穴あけ加工する関係で強度が問題になりそうで断念。

■どうでもいいマメ知識

■おわりに

十分実用できるものが出来て大変に満足。「こうすればもっと軽量化できる」「もっと便利になる」というご意見あれば是非お知らせください。

正直、どこかのメーカーさんに作って頂きたい。素人が作るよりずっと丈夫で軽量化できるだろうから。Topeak、Gorix、ミノウラあたりの中の人、ドウデスカー!