2014/03/22
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※SPAM防止のため捻ってある

小径車を考えている人へ

■はじめに

本文書は、街でちょっと話題の小径車というヤツに乗ってみたいと思ってる人に、 いったいそれがどの程度のものなのかを紹介するものである。 ここでは、我輩が、中級ロードバイクと小径車(いろいろつついたBD-1、 ほとんどつついてないBruno)に乗り続けた経験を元に、 その差を大変主観的に紹介している。 小径車マンセーな人々には多少なりとも不愉快な表現があることを先に断っておく。

ここで言う小径車とは、20インチ(406)以下のものを指す。実は、 20インチ(451)以上の自転車には乗ったことがないんですよな。406と451とで そんなに走行性能変わるような気はしないけど、20インチと24インチだとずいぶん 違うような気がする…。 ちょろっと乗ったGIANT MR-4(24インチ)は確かスゲーよく走った記憶が。

■結論

はいもういきなり結論。以下の条件のいずれかに合致する人は、 小径車に乗ってもよい(※乗るべきだ、ではないことに注意)。

逆に、小径車に期待していることがこれら全部に合致しないのであれば、 その人は小径車に乗るべきではない。乗ったら多分後悔する。 以下、その理由を述べる。

■小径車の走り

小径車は走らない。とにもかくにも走らない。それはもう絶望的に走らない。 そもそも、「舗装路を早く遠くへ快適に走る」ための自転車はロードバイクであって、 小径車はそういう用途には全く向かない。 よく比較されるが、サス付きだと、クロスバイクよりも確実に走らない。 結構細いタイヤ(20x1.10とか)を履いた小径車で、 太いタイヤを履いたマウンテンバイクよりはマシくらい。 「よく走る順位」を書くとこんな。

ロードバイク >>(超えられない壁)>> クロスバイク > 小径車 > マウンテンバイク

我輩は、ロードバイクで一日200km走れと言われれば、抵抗無く走る。 しかし、BD-1で一日100km走れと言われたらちょっと考えてしまう(※Brunoだったら まぁイケる)。 つまりそのくらいの差があるということ。BD-1での三浦半島一周(自宅から140km)は 本当にキツかったなぁ…。 後ろは10速とはいえ、前がシングルギアだというのはあるけれど。

従って、「ロードと同じくらい走る小径車はないか?」の問いには、 「無いからロードを買え」と言い切りたい。アレックス・モールトンとか、そういう びっくりする価格の物なら違うのかもしれないけれど、 我輩は貧乏だからそういうのに乗ったことはないのでなんとも…。

小径車に走りを求めるなら、ダイヤモンドフレームでサスペンションの付いていない ものを選択するのがいい。乗り心地は悪いが、がんばればクロスバイクよりは 走れるようになる。

■メンテナンスの必要性

小径車の各部にはガタがきやすい。理由は以下の二つ。

  1. サスペンションや折りたたみ機構があって、普通の自転車よりも可動部が多い (折りたためない&サスペンション付いてない自転車は除く)
  2. 路面からの振動がダイレクトに各部に伝わる

後者がかなり致命的。フレームが小さくて高剛性になりがちであり、 加えて振動を吸収してくれるはずのスポークやフォークが短いことに起因して、 路面からの振動がそのまま各部に伝わりがちなため、各部品に負担がかかって 緩んでしまうことは多い。 普通に整備する時も、我輩は小径車の場合は一段強いトルクで各部を締め付ける (いいか悪いかと言われると悪いんだけど)。 そうしないと、ホントに徐々に緩んできてしまうから。

ただ、そうやって注意深くメンテしていても、それでも徐々に各部にはガタが生まれて しまう。それを発見し、少しずつ調整し、吸収するために、日々のメンテナンスは かかせない。700cのロードに比較すれば、その回数は飛躍的に多い。

■小径車の通説、一問一答

ここで、世間で言われている小径車の通説について、 主観バリバリにて我輩が一問一答形式で答えよう。

なお、我輩の自転車能力は低い。レースでの結果は真ん中よりもかなり下、 ヒルクライムだと後ろから数えたほうが早く、 一日300km走るのが限界、ツインリンクもてぎでのサーキットレースで Avg.34km保って一時間って相当キツいなぁ、程度。 以下は、そんな素人+αな我輩の「個人的な感想」であることをあらかじめ お断りしておく。もしかしたらアナタには別の答えがあるかもしれないよ!

●小径車は踏み出しが軽い?

ウソ。我輩程度の脚力だと、決してそんなことはない。 従って、ストップ&ゴーが得意、ヒルクライムが得意ということもない。 自転車最高速度の世界記録は長いこと小径車だったが、 それはプロの剛脚さんが数百mだけ全力で踏み倒した結果であって、 それが何十kmも保てるわけではないことも付記しておく。

●小径車はタイヤの回転が多いので回転部品が壊れやすい?

ウソ。我輩が乗るくらいの速度や距離では、有意な差はない。 計算上700cの1.72倍(=700/406)くらい早く消耗するはずだが、 たとえば普段乗りのBD-1のLXハブは、 1万km走っても一度だけ玉あたり調整しただけで、まだまだ元気だ。 ただし、タイヤの減りは確かに早い。これは間違いない。 もともと消耗品だけど、計算よりももっと減ってる気がする。 空気圧が低くて直径が小さいから、接地面が変形しやすいのが理由だろうか。

●小径車は乗り味が硬い?

ホント。がっちんがっちんなので、遠距離ではかなり疲れる。 前述のように、スポークやフォークが短いこと、小さなフレームが高剛性になることが 原因。これは防ぎようがない。 これをなんとかするためにサスペンションが付いている小径車は多いが、 ソレはソレでまじめに走ろうとすると逆に漕ぐ力が逃げてしまうので辛い。 走りを重視するなら、サスペンションはなし(リジッドにする)か、 1cmもストロークしないくらい硬いのを使うべき。オイルダンパーを付けてる人が居たが アレってどうなのかな。SpecializedのBrain Shockをつけてみたいところ。

●小径車は速度維持が難しい?

ホント。これは素人でもわかるくらいかなり如実。足を止めた時に減速していく 割合は、明らかに小径車の方が大きい。 どっちかというと「その自転車に最適な速度域」というのがあって、 それがタイヤがデカい自転車よりも低いのだと思う。我輩の私見だと、 ロードなら25km/hくらいが楽に漕げる速度、小径車なら18km/hくらいがその速度。 フライホイル効果低いから、というよりも、回転軸の抵抗が大きいから、では なかろうかと思う。

●小径車はギア比が小さくなるのでクランクを余計に回さないといけない?

ウソ。いや、物理的にはホントなんだけど、それはつまり最高速チャレンジ する時の話であって、下りで踏み倒して60km/h以上出すぜーヒャッハー!の時以外は、 ちゃんとギアを使えば適当なクランク回転数で大丈夫。 確かに小径車のギア比で60km/h以上出すことは難しいけれど、そもそもそんな スピード出すことなんて日常乗りではまぁないしね。50km/hくらいまでなら 追い風だったりするとありえるけど、そのくらいならアウタートップで くるくる回してイイカンジ、くらい。 きっと、スピード出る本気乗りする人は困るだろうけど、我輩程度の脚力で しかもレースに出たりしない人なら困らない(断言)。

●小径車のハンドリングはクイックでふらつきやすい?

ホント。 ジャイロ効果が小さいからというよりも、 単にタイヤが小さくて軽いからハンドルを切りやすいのが原因だと思う。 あと、タイヤ径が小さいためにフォークオフセットとトレイルが短くなりがちで、 直進安定性が悪いのも原因。

●折りたたみ機構付きの小径車は、折りたためて部屋にしまえて便利?

ウソ(ゆっちゃった)。折りたたみ機構がどんなに簡単でも、 乗り出してしばらくすると、日常的に折りたたむことはまぁなくなる。 よっぽど折りたたみラブな人でない限り、折りたたみって結構面倒なものなんだよ。 ただ、たまに旅行する時に、折りたためると輪行には便利だ。 少なからず走行性能を犠牲にしてんだから、そのくらいの利便性は欲しいよね。

■フォロー

誤解なきように言っておくが、我輩は小径車が大好きだ。今もロードバイク持ちでは あるが、正直ロードには年に何回も乗らず、BD-1には毎週末乗っている。 そのアホ愛らしくもスタイリッシュな造形、手間と金と時間がかかる整備、 無駄にクイックなハンドリング、踏んでも回してもちっとも走ってくれない足回り、 「折りたたみ」とかゆってるけどフツー家でいちいち折りたたんだりしないよな! という諦観、全てが大好き。

だからこそ、小径車に乗りたいと思っている人には、 事前にこういうのをバッチリ了解した上で小径車を求めて欲しいと思う。 せっかく乗ったのに、「思ってたのと違うー」とかいって離れていってしまうのは、 見てて本当に忍びない。 小径車には小径車の楽しみ方があるんだよ!それを理解して欲しいのだ。

本書がその一助になれば本当に幸いである。

■これは外せない

小径車をけちょんけちょんにしちゃう飯倉さんの動画。 正しいことを言ってるとは思うけれど、何故か各所にトゲを感じちゃうから、 小径車マンセーな人は閲覧注意。

「車輪の径が小さいことに何のメリットもない!」と言い切ってるけど、 いやいや、実はファッショナブル(に思う人が居る)ちうメリットがあるんですよ。 だから我輩は、上で「セレブ」なんて人は乗ってもいいんじゃないか、と ゆっているのであります。自転車なんてそもそも全部道楽だからね!(ワーォ極論)

■おまけ

あー、 GIOSのPANTOと、 TyrellのAM-9と、 GIANTのIDIOM マンハッタンバイクのm451RC に乗ってみたいなー。 そしたら小径車に対する意識がまた変わるんだろうなー。 誰かプレゼントしてくれないかなー(チラッ)。

でも実は一番乗りたいのは DOPPELGANGERの530 (昔あった222555と同じだよね?) だという。安上がりですね我輩。 誰かフレームだけくれないかしら(フルセットだと交換する部品が邪魔になるから フレームだけ欲しい)。いろいろつついて遊びたいんだー。