2024/07/02
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ケイジバン

SENSAH EMPIRE PRO 12s 導入記

■はじめに

本書では、2008年モデル(?)のBOMA CT-11Cに、中華機械式12速コンポーネント SENSAH EMPIRE PRO を導入して色々したことについて述べる。

お勧めできる構成ではないことは承知の上で、旧型自転車に最新コンポをツッコんだら どんなことになるかというのを検証した次第。だって自転車つつくのって楽しいから!

結論としては「一応実用は可能。ただし色々注意事項アリ」ということで一つ。

■おやくそく

このページの情報は一切無保証で、やってることが危険だったり誤っている可能性も あることを先に了承すること。このページを見て同じことをやろうとした結果、 「動かないじゃん」「不具合あるじゃん」だけならまだしも、 万一アナタが事故ったとしても、我輩は一切それに関知しない。

■何故中華コンポ?

ウチのBOMAさんは2008年の購入当初から105(5600)の10速で運用してきた。 のだが、先日イベントに(サポートで)参加した際、めちゃ長距離走った後に12%〜14%の 激坂を登らされる地獄を目の当たりにし、

という思考を経て、「リムブレーキ+12速」のコンポを物色し始めたのが始まり。 要件はこんな。
  1. 2x12s
  2. リムブレーキ(=ブレーキはワイヤー引き)
  3. シフトもワイヤー引き(※飛行機輪行するから電池の扱いが面倒な電動シフターは×)

ただ、探してみると、シマノにはそういう選択肢がなかった。 105/GRXは12速化したが、残念ながら油圧ディスクのみ。一方SRAMはお高すぎる。 LTWOOやWheelTopは電動や油圧なので除外。

そうすると、残るはGROWTAC EQUALレバーとSENSAH EMPIRE PRO。 前者は魅力的だったが、やや高価なのとあまり面白味がない(?)という理由で却下。 ということで、EMPIRE PRO導入に動き出したわけで。

注意点として、EMPIRE PROは公式が「シマノのFD/RDとは互換性がない」と言っていることが 挙げられる。 FD/RD/スプロケットも含めて、SENSAHからEMPIRE PRO向けに提供されているものを用意する必要がある。 何かあったときにシマノコンポに変更できないのは辛い…。

(追記)なんかSENSAH TEAM PROの12速(11速じゃなくて)なんてのがあるらしくて、そっちはシマノ12速互換だと 聞いたんですが、ホンマかいな…。本家にもそんな記述ないのに。

■入手

メルカリで新古品を安く購入。 のだが、購入後に確認したら部品が不足しており、購入元に問い合わせたら「探してみます」って言ったきり音信不通になり、どうしようもなかったので自分で用意するハメになって追加費用かかったけどまぁよし。皆様は自分の出品物や発言に責任を負いますようお願いします。 部品調達の際の調査で、岩田製作所から シムリング(スペーサー、ワッシャ)がかなり細かいサイズを型名指定で購入できるということを知った(後述)ので、結果オーライさ!と前向きに。

そういうことがあるから、皆様には新品をAmazonとかで購入することをお勧めしますよ。 Aliexpressも最近は結構信頼できるからいいんじゃないかしらん。

●組付け

組付けで注意することは殆どない。普通のコンポの組付けと同じ。

細かく注意することといえば、レバー周りが多い。

  1. 最初から挿入されているシフトケーブルを抜いてはいけない
    後からはめちゃめちゃ入れにくいから。抜いてしまったら、先がほつれない新品ケーブルを用意し、全力で押し込む必要がある。プライヤーとかで掴んで全力で押し込むと、にゅるっと入ってくれる。一度入れば後は普通に押し込むだけ。ケーブルが挿入後90°上に回っているので、そこを越えるのが難しい。シリコンスプレー吹くなどすればちょっとは楽になるかも。これとかこれとかの先人の知恵参照。

  2. ブラケットへのアウターケーブル挿入時、ブレーキ・シフトとも、アウターキャップが必要
    ないとグラグラする。あと、入れた後抜こうとすると今度はアウターキャップだけがブラケット内に残って困ったりもする(解決策はない)。

  3. シフトアウターの取り回しがスゴい悪い
    ブラケットからハンドルバーに回す箇所で、シフトアウターをヤケにムリな力で曲げる必要がある。ビニールテープで固定しきれないくらいムリなので、バーテープ巻く時に無理矢理抑え込む必要がある。 これシフトケーブル大丈夫なのか…?

  4. バーテープは、ブラケット根本の上側になるべく被さらないように巻く
    ブラケットカバーを捲ると判るが、ブラケットカバー根本付近にでっぱり、ブラケットの根本に凹みがある。ここにバーテープがかかっていると凸凹がうまく合わず、ブラケット根元がコブのようになってしまう。そして握る時に痛かったりする。薄いバーテープなら無視していいのかもしれないが、厚いバーテープの場合は、全部巻いた後で泣きたくなるので注意。

  5. リアディレイラー側のアウターケーブルは長めにする
    SENSAHのRDは後ろに向けてアウターケーブルが出ている。最近のシャドウRDのように上向きではない。だもので、アウターケーブルの取り回しがシャドウRDに比べて長くなる。アウターケーブルを張った時の内径が、よく言われる「ゲンコツ一個分」では足りず、ゲンコツ1個半分くらいあった方が、引きが重くならない。

  6. フロントディレイラーの調整が泣くほど難しい
    本当に難しい。フロントディレイラーのシフト位置は「アウター、アウタートリム、インナートリム、インナー」の4つがあり、アウターとインナー位置を合わせるだけだとどうしてもうまく変速できない。かといって移動範囲を広げれば、外か内にチェーン落ちしてしまう。 我輩は一時間近く格闘してた気がする。それでも実際走ってみるとイイカンジになってなくて再調整必要だったりと、本当に苦労させられた。

組付けたコンポーネント一覧はこちら。

コンポコンポ型名備考
レバーSENSAH EMPIRE PRO レバー
フロントディレイラーSENSAH EMPIRE PRO FD後にFD-6800に変更(後述)
クランクシマノFC-5600(50-34t)まさかの5600(10速用)。互換性?知るか!
スプロケットシマノ CS-R7100(11-34t) 公式的にはダメらしいが、使えるという情報を見て導入。 実際普通に使え、変速機能に問題はない。
リアディレイラーSENSAH EMPIRE PRO RD

■結構イイじゃん!

そうやってやっとこ組みあがったものに乗って、100kmくらい走ってみた。 12速はとてもいい。平地ではフロントをインナーに落とす必要ないし、 インナーローの34-34Tなら泣くような坂も登れる。ロングライドに最適ではないか! シフトフィールも思ってたよりは悪くない。

■気に入らないところ

だけど、イイ所を書いてもあんま参考にならないと思うので、 以下、気に入らない所をつらつらと、忘れないようメモしておく。

  1. シフトチェンジの音がスゲーうるさい
    なんか高級感のない「ガチン」という大きな音でシフトチェンジされる。決して安っぽくはないが、ラグジュアリィ感は皆無。こういうところが中華なのかなぁ。

  2. 壁に立てかける時に、レバー先端のプラ部分が痛む
    ブラケットカバーよりレバー先端のプラ部の方が張り出しているため。 シマノのSTIレバーはブラケットカバーがレバーから張り出しており、こっちはレバー先端が傷つくことは(少)ない。SENSAHもほんの少しだけレバー形状捻ればよかったのに…。

  3. ブラケットカバーがあんまよろしくない
    ブラケットカバーがヤケにガバガバ。ゴミが付きやすく、手触りが悪く、ついでにヘンなニオイがする。これは厳しい…。入手したのが新古品だからかもしれないけど、でもだからこそこんな酷いことにはならないと思うんだけどなぁ。一度煮てみた(※伸びたゴム製品を縮めることができるとか)が、サイズ・手触り・ニオイともに変化なしだった。 aliexpressのブラケットを購入したら、こっちは(少しゴムが薄いものの)ピッチリマッチするし手触りがよくて無臭。安いし予備で二つくらい購入しとくことをお勧めする。ただし、このリンクから注文したとしても(中国だし)同じ製品が届くかどうかは神の味噌汁。

  4. リア最ローギアから幻の一段を探すと地獄を見る
    ダブルタップ的なシフターの弱点。坂道を最ローギアで登っているとき、苦しくなってもう一段下がなかったかなと探してレバーを回すと、シフトアップしてしまう。これは地獄。疲れてる時にコレやられると足をついちゃうかもしれない。同じように、フロント変速も意図せずアウターからインナーに落ちちゃうことも。ここはレバー側で工夫が欲しかったところ。SRAMはこれを回避できるらしいね。

  5. フロント変速がめちゃ重い
    絶対コレ壊れてるよね?こんなに全力で引かないとアウターに変速できないなんておかしいよね?ケーブル切れるよね?というくらい重い。フロント変速はシマノが世界一と言われるそうだが、その理由が判った気がした。これは後に解決策を提示する。

  6. フロント変速機の移動量が多すぎる
    絶対コレレバー比おかしいよね?アウターにすると外に移動しすぎる(からチェーンが外落ちする)し、インナーにすると内に移動しすぎる(チェーンが内落ちする)。アウター側調整したらアウタートリムで止まってアウターに上がってくれないし、インナー側調整したらインナートリムが役に立たなくなっちゃう。FDのケーブル支えるアームが、FD-5700世代くらい短いからじゃないの?設計間違ってない?あとFDのチェーン通す溝(アウタープレートとインナープレートの間)の幅広すぎない?チェーンめちゃ外れるよ?

  7. リアが最ローギアの時、リアディレイラーの内側とスポークが当たる
    有名な話。実際にはホイールに依る。 WH-6800だとクリアランスは2mmくらいで当たらなかった。だがFH-R7000ハブの手組ホイールだと、クリアランスはコンマ何mmかくらいしかなく、力を入れて踏み込むか体を右に倒してホイールが撓むと、RDがスポークにかすってしまう。スプロケットがCS-R7100なのが問題なのかもしれないが、SENSAH純正だろうと寸法は何mmも違わないだろうから、やっぱりホイールに依るとしか言えないんだと思う。他の方の例。対策は後述。

  8. ブレーキの引きが重い
    うん、重い。ST-5600よりもST-5700よりも重い。後輪側に至っては「指鍛えてるのかな?」と思う程重い。ケーブルにシリコンスプレー吹いたりしてみたが改善せず。レバー出口のケーブルの取り回しが悪いのか…?原因はよくわからない。

  9. クランクを逆回転すると、チェーンが外れる
    ちょっとチェーンラインが厳しそうな状態で逆回転すると、実にあっさり外れる。前も後ろもそう。12速ならそういうものなのかもしれないが、長く10速しか乗ってこなかった身からするとやたらに繊細に感じる。インナートップ・アウターローのムリっぷりも激しい。 加えて、SENSAH EMPIRE PRO特有の問題として、 「チェーン逆回転すると、リアディレイラーのガイドプーリー(上側)からチェーンが内側に外れ、以降正回転させてもチェーンが元に戻らない」ということが何度か起こった。 おかげでチェーンがRDのインナープレートを削ってプレート傷だらけになったし、下手するとインナープレート削り切って割れていたかもしれない。

    やっちゃいけない操作をメモしておく。

    1. フロントインナー、リア4速くらいに入れる(実際は任意だが、こうすると起こりやすい)
    2. ペダリング停止
    3. リアをシフトアップ方向に3段レバー空打ち
    4. クランク逆回転→チェーンがガイドプーリーから外れ、インナープレートを削る
    5. クランク順回転→チェーンはガイドプーリーに戻らず、インナープレートを削り続ける
    6. 泣く

    チェーンが内側に外れるそして傷だらけに(プーリーも傷だらけ)

    この問題については、別のページで解決策を提示する

■シマノのフロントディレイラー導入

あまりにフロント変速がポンコツなので、シマノFDを導入することにした。 SENSAH公式には使えないことになっているが、先人の知恵を調べるとFD-R7000あたりは 問題なく使えるらしい。ソレだ!

というわけで買ってきましたFD-6800。 なんでFD-R7000/FD-R8000じゃないかって?こっちの方が安かったからじゃーい! あと今使ってるシフトケーブルそのまま使い回したかったので、ヘンな取り回しされない FD-6800の方が楽かなって。

交換はさくさく。ケーブル長はギリギリ足りた(余りが1.5cmくらいしかないから 足りてないかもしれないが足りたことにした)。調整も、SENSAHのFDに比べるとめちゃ楽。 そして普通に変速できて、引きも随分軽くなった。FDの移動量もちょうどいい。 なんだよもうコレでいいじゃん!SENSAHのFDなんか要らないじゃん!ケーブル固定するアームの長さが全然違う(レバー比が大きく変わる)のにちょうどいいってどういうことなの?

気になる点は二つ。自転車にも依ると思うが。

  1. 少しだけチェーンリングとのクリアランスを大きくする必要がある
    通常、フロントディレイラーとチェーンリングの刃先とのクリアランスは1〜3mmが推奨されていたと記憶している。しかし、その範囲で調整すると、チェーンがディレイラーに擦ってしまう場面が多かった。FD-6800のアウタープレートの上側は内側に張り出していて、特にリアのギアが大きい時に、ここがチェーンに当たることがあるようだ。なので、クリアランスを3.5mmくらいにしてそれを回避した。推奨とは異なる設定ではあるが、シフト機能には問題なく、スパスパ決まるようになった。

  2. シフトケーブルがギリギリディレイラー裏に当たる
    インナー時、ほんのちょっとだけシフトケーブルがディレイラーのパンタグラフの根本に当たっていた。これはBOMAのケーブルの取り回しがアレだからだと思う。FDのケーブル止めのボルト部分の部品でケーブル取り回しを少し調整できるが、それをしても改善しなかった(むしろ酷くなった)のでこれは諦めた。機能的には問題ない。

■リアディレイラーとスポークが擦っちゃう問題の回避策

先述の通り、リアを最ローギアにすると、ホイールによってはRDのインナープレートとスポークが当たってしまう。当たるのはガイドプーリーの軸付近。色々調整してみたが、我輩手持ちの手組ホイールだけは、どうしても微妙に当たっちゃう。これをなんとかしたい。もうコンマ何mmかだけクリアランスを広げることができれば、回避できると思う。

暫く寝ても覚めてもリアディレイラーとスプロケットの間を広げる方法を考えて、以下三つを思いついた。

  1. Bテンションボルトを締める
    ギアチェンジに影響が出ない程度にBテンションボルトを多めに締めて(=スプロケットとガイドプーリーを離して)やると、ちょっとだけマシになる。ガイドプーリーが下がることでスポークの「一番張り出した部分」から離れるからだろう。これで解決できれば御の字。しかし我輩のケースでは、(軽減はするものの)解決できなかった。

  2. ガイドプーリーの固定ボルト付近を削る
    ガイドプーリーの固定ボルトをよーく観察すると、インナープレートからほんの少しだけはみ出していることが判る。ノギスで測ると0.3mm程度。ボルトが完全にインナープレートに埋まれば、0.3mmのクリアランスが確保できることになる。なので、インナープレートの皿うけ部分をヤスリで根気よく削ってみた。結果、ボルトのはみ出しは0.1mm程度までに抑えることができた。これ以上削るとボルトが遊びそうだったのでやめた。効果はあってかなりマシになったが、まだ稀に擦るので完璧な対策ではなかった。

  3. DuraACEのガイドプーリーに交換
    理由は不明だが、DuraACEのガイドプーリーは厚みが7.4mmなのだそう。通常のプーリーは8.0mmなので、0.6mm細い。コレを導入すれば、労せずインナープレートを外側に0.6mm移動させることができる。
    …のだが、やめた。だって高い (Amazonで3155円もする)んだもの…。いつまで経っても貧乏性が抜けません。

  4. ハブのロー側にスペーサーを入れてスプロケットを外側に移動させる
    危険な発想なのは判っているが、有効だ。 機能的にはスペーサーの厚みは0.5mmくらいで十分。 ただ、スプロケットを外に移動するとディレイラーとの距離が変わってしまうので、これを調整するために車軸側にも同じ厚みのスペーサーを入れる必要がある。 0.5mm車軸が長くなってしまうが、そのくらいは誤差としてフレームも許してくれるだろう。

    具体的には、スプロケットに内径35mm厚さ0.5mm程度の、クイックの車軸に内径10mm厚さ0.5mm程度のスペーサーがあればよい。だけどそういう「ちょうどいいサイズのスペーサー」ってなかなかないんよなぁ…というアナタのために!岩田製作所のシムリング!型名調べてAmazonとかで探せば引っかかるので是非! 今回は、ステンレスの35x42x0.5mm(BRS035042050)+10x20x0.5mm(BRS010020050)のシムをそれぞれ一枚購入してみた。送料が高いのがネック。BRS035042050の代わりに、 Amazonのこんなのを入手してもよかったかもしれない。

    で、導入。これでRDとスポークとのクリアランスが最低でも1mm程度になり、やっと問題なく運用できるようになった。

    ただし、以下三つの問題があることに注意。

■その他の要らん知識

■おわりに

SENSAH EMPIRE PRO 12s、「色々問題はあるがまぁ使える」。ダメな子を叱咤激励して使えるようにしたいアナタ!向いてますよ!導入しては如何ですか!

ご意見や情報、誤情報訂正要求(根拠つき)などは募集中。 掲示板経由でも メール経由でも構わないのでどうぞ。