2016/06/22
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我輩的超我流MIX法

■はじめに

本書では、我輩が駆け出しの歌ってみたMIXerとしていろいろやってきたことを元に、我流で 固まっ(ってしまっ)たMIX方法について述べる。実体験を元に、初心者が躓きやすい 部分とかも書くので、参考にしてもらいたい。もちろん、ここに書いてあることが 100%正しいわけじゃないので、信じる心はほどほどに。ネットの情報なんか 疑ってかかるもんだよ!?(じゃぁなぜ書いた)

■MIXとは

ここで述べるMIXは、パラミックスではなくて、いわゆる「歌ってみた」を 作成する作業。すなわち、カラオケ音源と素人さんが歌ったボーカルを、 エフェクトとかを盛り込んで合わせてうまいこと組み合わせ、 「スッゲー上手に歌ってるかのように聞かせる曲データ(.wav)を作る」 という創作性が高いんだか低いんだかよくわかんない作業である!

なぜかこれが…楽しいんだ…。うまくできると…うれしいんだ…。なんでだろう…。

■必要なツール群

MIXはPC上で実施するので、いくつかツールが必要がなる。最初にそれらを 用意しよう。本気でそろえるとお金がかかるので、まずは 自分のレベルにあわせて用意するといい。 のだが、ここでは我輩推奨のものを列挙する。

最低限必要なものは、DAW(Digital Audio Workstation、以下ではCubaseが相当)。 それさえあれば、とりあえずそこそこのMIXはできる。ただ、実際には依頼者に 満足頂けるようなMIXを実現するには、ピッチ(音程)調整とタイミング調整が 絶対必要で、そうなるとDAWだけでは厳しい。現在は、我輩は以下を使っている。

  1. Audacity
    フリーの音声ファイルエディタ。初心者にもスッゴい使いやすくて、 ホント助かってます。mp3が読めるのも評価高い。 ただ、音質についてはあまり過信できないので、Audacity上でたくさん操作しない方が いい。SoundEngineでもいいんだけど、 あっちはそのままじゃmp3が読めないんですよなー。起動高速だから、 音圧上げたあとの最終的な波形チェック(海苔とか昆布になってるかどうか)にも さっと使えて便利。

  2. Melodyne 4 Studio
    ボーカルのピッチとタイミングを補正するためのツール。 AutoTuneというツールと 双璧をなすが、我輩は試用した限りこっちの方が使いやすかったのでこっちにした。 聞いた限り、音質はどちらも大きく変わらないと思うが、変更幅が大きくなると Melodyneの方がきれいだと感じた。
    いろんなエディションがあって、お安いのは2万円台から、お高いのは10万円とか するのだが、我輩はコーラスのタイミングをばっちり合わせるために必要だったので 一番お高いStudioエディションを購入。高いよチクショー!でも便利なんだ…。 細かいバグが多くて時々困るというオマケつき。ただ、サポートは(英語必須だけど) ものスゴ親切でした(フォロー)。

  3. Cubase Pro 8.5
    いわゆるDAW。オーディオインターフェース( Steinberg UR12) 買った時に Cubase AI がくっついてくるんだけど、ピッチ修正するために ProにしかないVariAudioを使いたかったので、あえてProを購入。しかし、 前述のようにMelodyne導入しちゃってピッチはそっちで修正することになったので スッゲー無駄でした。やっぱいっそAIでよかったんじゃないですかね。VSTプラグインの 数はProの方が多いけどさ。…ところで、今のCubaseで Keroveeが うまく動かない(VSTとして認識はするが、Editしようとすると固まる)んだけど!? なんで!?Cubase Patch 8.5.20で直った模様。

  4. iZotope OZone 7
    マスタリング用のVSTプラグインとして使用。使うと音圧が簡単にあがって、「すごく うまくMIXできた気がする」。Cubaseにも付属のMaximiserちうVSTプラグインが あって、これでも似たようなことはできるが、そっちが優等生的におとなしく 音圧を上げるのに対し、OZoneは音圧の「きれいな上がりっぷり」が段違い。 有料なだけあるわー、と納得。ただし、我輩はあんま音圧競争に関わりたくないので、 マキシマイザかなり弱めにかける。

  5. WAVES Gold 9
    世界の標準WAVESのVSTプラグインキット。DAWと組み合わせて、カッコいい音を作る のに利用する。DAW標準のVSTプラグインだけで対応することももちろん可能だが、 やっぱWAVESとか使うと、いろいろ楽だし早い(※結果がよくなるかどうかについては 言及しない)。お高いものには意味があるということか。Goldがあれば当面は 十分だと思うが、Goldには入ってないZ-NoizeとかL2 UltraMaximizerがほしく なったりする昨今…。またGold→Plutinumとかのセールやってくんないかなぁ。

お金に余裕があれば、追加でVST買ったりツール買ったりすればいいが、みんなが みんなそんなリッチマンではないだろうから、事前に下調べして、「ほしい!」と 思って、さらに余裕ができた時に、少しづつ追加するようにすればいいと思う。

■MIX依頼者から提供される(べき)もの

これはMIX依頼者の方に読んで頂きたい。MIX作業するために必要なデータを以下に 示す。端的には二つだけ。

  1. ボーカルなしのカラオケ音源(以降オケと呼ぶ)。ステレオ。2mix(マスタリング前)が望ましい
  2. ボーカルのみの音源。通常モノラル(どうしても必要ならステレオ)。

いずれも44.1kHz/16bit以上の無圧縮.wavファイルで提供頂けるとありがたい。 mp3での提供は、DAWでエフェクトかけた時にきれいにならないことが 多いので、避けられるなら避けた方がいい。これは、mp3だと圧縮のために元音から 高音と低音がごっそり削られているのが原因。それを単体で聞いても違いはなかなか わからないんだけど、ちょっと加工するとスッゴい顕著になるんだよね…。mp3だと、 特に息継ぎとかが、びっくりするほどノイジーになるので注意。

それぞれ詳細を以下に示す。

ボーカルなしのカラオケ音源
ボーカロイドの音源なら、たいてい作者の方がカラオケ音源(以下オケ)を頒布しているので、 それを使わせて頂く。多くはピアプロとかで 頒布されているので、そこから入手する。アニメの主題歌などだと、普通には 頒布されていないので注意。CDに付いてきたりするのでそれを使ったりする。

いずれにしても使用ライセンスに注意。これを無断で使用してMIXして uploadしていいのかどうかなど、事前にちゃんと調査しておくこと。これは、 使用するカラオケ音源や、upload先によっても変化する。なお、 ニコニコ動画やYouTubeは、JASRACなどと個別契約していて、「原盤そのままO.K.」 「自前で演奏したものならO.K.」などの条件が提示されている。 ニコニコ動画のガイドラインはこちら。原盤を提供している会社によっても 異なるので面倒だけど、後でエラいことになるのを避けるために、ぜひ事前に 一読頂きたい。
そして、こういうライセンス確認は、MIX依頼者が実施すること。 自分が投稿するんだから、MIXしてもらう人にこんな面倒なことやらせちゃダメよ!

使用する音源は、2mix(マスタリング前)のものが望ましい。マスタリングした後の 曲は音圧が上がりすぎててボーカルが入り込む隙間がなく、MIXが不自然になる ことがあるため。マスタリング済みかどうかは、Audaticyとかでその音源を読んでみて、 波形が上下ギッチギチに詰まっているかどうかで判断できる。詰まっていれば マスタリング済み、そうでなくて隙間が結構あればマスタリングしていない。 でも、マスタリング済みの音源しか頒布されていないなら、仕方なくそれを使う ことになる。MIX師の腕が試されるところだ。

ボーカルのみの音源
依頼者が歌ったもの。以下のような注意点を守りつつ提供してもらえると、 MIX作業するときにスッゴい助かる。

  1. 必要でない限り、モノラルにすること
    通常は、その後の扱いやすさを考えてモノラルで提供して もらう。もし理由なくステレオになっていたら、黙ってモノラルに変換して 使用しちゃう。どうしても必要ならステレオでもいいが、なぜそうなのかを 事前に教えてください(「XXという効果を狙ってる」ならよし、 「自分では変換できないから」でもいいんで)。

  2. ボーカルはシングルトラックで1ファイルとし、ハモリなどボーカルが重なるものは別取りすること
    ボーカルはシングルトラックでなければならない。そうしないと、MIXのときに 音量・音程・タイミングが調整できないため。また、ハモリは、(Melodyneなどを 使えば)MIXで作ることができるため、必ずしも提供必須ではない。ただし、 MIXで作るハモリは原音をコピーして音程を変える(=加工する)ため、どうしても 音質は劣化する。きれいなハモリが必要なら、ハモリも別撮りして別ファイルで 提供すること。

  3. 最初から最後までの一発撮りである必要はなく、細切れの音声ファイルとなっていてもよい
    一発撮りではなくて、複数ファイルに分かれていてもよい。それはMIXで つなぎ合わせることができるため。ただし、複数撮りした場合は、すべての ファイルで録音品質や音量レベルがほぼ同じであること。そうでないと、 MIXした時に不自然さが目立つことになる。また、あんまりファイル数が多いと MIX作業が煩雑になって泣きたくなるので、分割はほどほどに。

  4. 可能な限り高音質であること
    これは当然。雑音・ノイズがないこと、割れていないことなどは、 最低限の条件。こういうのはMIXで修正できないからだ。昔、もらった音源に、 犬の鳴き声やトラック通過音が派手に入っててどうしようもなかったりしたが、 そんなのは論外。依頼者が「品質落ちてもいいや」と思っているなら別に いいけれど、だったらもういっそMIX依頼とかせずに依頼者が自分で MIXすればいいじゃん、と多くのMIXerは思うことであろうよ。 我輩は、マイクはあまりこだわらない派。もっともよいのは コンデンサマイク+オーディオI/Fだけど、ダイナミックマイクやPCのUSBマイク、 果ては携帯電話で録音されたものでも、ノイズがなくて割れてなければ かまわないと思っている。一番安上がりなのは、頭から毛布かぶって 布団の中で携帯電話に向かって歌うことじゃないかしらん。

我輩は、頭出し(カラオケ音源とボーカル音源を同時に開始すればちゃんとタイミング合って再 生されるように頭の空白を調整すること)は必要としない。 しかし、やっておいてもらえると、MIX作業がちょっとだけ楽になるのでうれしい。 普通のMIX師と呼ばれる人々は、頭出しやってないと受け付けてくれないことも あるらしい。そのくらいMIX側ですればいいのに。

あ、あと忘れちゃいけないのが、MIXに対する要望。 「XXの部分を3度上のハモリにしてくれ」とか「XXのところだけエコーを入れてくれ」 とか、「XXの[歌ってみた]のようなアレンジにしてくれ」とか、 要望があれば事前に伝えてもらうと助かる。作った後に「実はここはこうして ほしかった…」って言われると脱力しちゃうし、やり直すのもタイヘンなので。

■実際のMIX作業

我輩は、大まかに以下のような順序でMIX作業を進める。

  1. 送られてきたボーカル音源を、Audacityで確認、必要なら前処理
  2. オケと1.処理後のボーカル音源オーディオを読んで、Melodyneでタイミングとピッチ(音程)調整→編集後ボーカル書き出し
  3. 2.のオーディオを元に、CubaseでMIX

こういう手順になっているのには理由がある。 それは、「ある程度前工程のデータの差し替えができるから」だ。

全ての作業をCubase上で行うとはもちろんできるし、実際そうしている人も多い。 ただ、そうすると、途中で歌データの差し替えが必要だったりした場合に、 その部分だけCubase上での再調整が必要で、Cubaseはノート単位で管理されていない ためにその変更がスッゴい面倒だったりすることがある。 それを避けるために、「ノイズ取り+ノーマライズ」、「ピッチ調整+タイミング調整」、 「エフェクト追加+トータル調整」のシーケンスを分けて、一つ前の作業をやり直した 時の影響を小さくしようとしていると思ってくだされ。「えーそんなんCubaseだけで できるやん」って人はそれでやればよろし。でも、ハモリ含めたタイミング調整って スタンドアロンのMelodyne Studioじゃないとスッゲー手間だと思うんだけどなぁ。 慣れた人だったらそうでもないのん?

我輩がいつも使っている、1つのMIX依頼に対応するディレクトリ構成は以下の通り。 audacityでの編集は「ソース音源」ディレクトリ中でやり、 それを元にMelodyneが吐き出すWavデータを「編集」ディレクトリに配置、 Cubaseはその下の「編集/CubaseMix」ディレクトリをプロジェクトフォルダとする。 Melodyneは.mpd以外にテンポラリファイルを作らず、 一方Cubaseはやたらとテンポラリファイルを吐き出したがるので、 それをまとめるためにこのような構成になっている。 この構成なら、作業が終了したらCubaseのファイルは.cpr以外は消してもよい。

20160730 梅雨明けの さくら/ ←依頼日+曲名+依頼者でディレクトリ作成
  参考音源/        ←オリジナルのボカロ曲、誰かの歌ってみたなど、参考にする音源を格納
  ソース音源/       ←音源データ↓をAudacityなどで編集したwavファイル。編集してなければコピーでよし
  ソース音源/変換前/   ←依頼者から頂いた音源データそのままを格納
  編集/          ←Melodyneファイル(.mpd)と、Melodyneで編集後のWAVデータを格納
  編集/CubaseMix/     ←Cubaseファイル(.cpr)を格納     

我輩は、この構成の(デフォルト.cprや.mpdを含む)テンプレートディレクトリを作成しておいて、 新しく依頼を受けた時はこれをコピーして使用するようにしている。 いちいちディレクトリ作るより楽だし。 Cubaseの.cprをつつこうとしたら「新しいプロジェクトフォルダ指定してネ」って 言われるけれど、指定すれば二度と聞かれなくなる。

●送られてきたボーカル音源を、Audacityで確認、必要なら前処理

まずは前処理。元音源をAudacityに読み込ませて、一つ一つ聞きながら、処理するか どうか考える。

  1. 理由なくステレオだったら → モノラルに変換
  2. 音量が小さかったら → MAX=-10db 程度にノーマライズ(正規化)で音量アップ
  3. ノイズがあったら → ノイズ除去
  4. 劣化を防ぐため、書き出しは32bit(float)にて

当然、元音源とは別ファイルとしてセーブすること。その場合、次以降の手順では オリジナルファイルは使用しない。

音量が小さすぎる(MAXで-30dbとか)場合、なるべくこの時点で上げておいた方がいい。 その後にノイズ除去するので、ここで音量上げておけば、ノイズも効果的に 削減できるからだ。MAX=-10dbには特に基準はないが、ここで MAX=-1dbとかまで 上げちゃうと、その後DAWでの調整時に音割れとの戦いになって厳しくなっちゃう ため、あんま上げすぎないこと。-15dbくらいでもいいと思う。

Audacityのノイズ除去は結構優秀で、「ノイズだけの部分を指定して分析させ、 それに従って全体のノイズを取る」ことができる。一手間必要ではあるが、 機械的なフィルタリングに比較すると随分イイカンジにノイズを取ってくれる。 …そりゃWAVESのZ-Noise(6000円〜)とかスッゲーノイズ除去VST使ったほうが いいのはいいし、比べるのは酷だけど、ほとんどの場合はAudacityで十分。 実際には少々ノイズが残っても、MIXすると(静かな曲でないかぎり)ほとんど 聞こえることはない。だから、ノイズが小さいなら、躍起になって消すよりも、 何もしないほうがいいこともある。ノイズ除去すると必ず音質が少し劣化するしね。

備考:この段階で、AudacityではなくてDAWを使うというのもアリだと思う。 DAWを使えば、音量調整もばっちりできるし、ノイズ除去に優秀なVSTが使用できるし、 もちろんステレオ→モノラル変換も可能だし、複数のトラックをまとめることも できる。そして、音質の低下が少ない。DAWに慣れてるなら、DAWを使うことを お勧めする。最終的には「WAV形式(32bit(float))で吐き出す」ことにだけ注意すれば。

●Melodyneでタイミングとピッチ(音程)調整

MelodyneはDAWから呼び出すことができる。しかし、 我輩はMelodyneを単体で利用し、DAWからは使用しない。DAWとMelodyneはあんま 親和性がよくなくて、かえって操作が煩雑になると感じているから。DAWは 音全体をトータルとしてみるのに向いていて、Melodyneはボーカルを「ノート」 という単位に分割して操作するのに向いている。また、ハモリのタイミング調整 などは、Melodyne(のStudioエディション)上でやった方が格段に楽だ。 だったら、それぞれを独立して使い、この二つをWAVファイルでつないだ方が いいじゃん、と思うんだ。もちろん、このあたりは主義主張なんで、 使いやすい方でやればいいんだけど。

そして我輩は、Melodyneでガッツリタイミングとピッチ調整する派。本当に歌が上手な 人ならほとんど調整することはないが、「歌ってみた」の依頼者の方だとそこまで 上手な人は少ないので。ピッチやタイミングがズレていると、ほかが上手くても どうしても下手に聞こえてしまうから、ピッチあわせは重要だと思う。 ただし、依頼者の歌い方の「味」まで修正してしまわないように注意。我輩は よく過修正してしまって、途中で依頼者に叱られたりする。

なお、本節ではMelodyneはStudioエディションであり、マルチトラック編集が 可能であることを前提にしている。他のエディションの場合、マルチトラック 編集できないから、テンポを完璧に設定した後にオケトラックを消して ボーカルトラックを読み込む、のような手間が必要になるだろう。 …というか、Studio以外だったらDAWから呼び出しても変わんないんじゃない?

前準備

Melodyneを使う上で最初に設定が必要でしかも最も重要なのは、 「オケとMelodyneのテンポをあわせること」。 これがバッチリできていれば、後の作業がスッゴい楽に、かつ正確に できるようになる。逆に、これができてないと、タイミング調整が壊滅的に 能率悪くなっちゃうのでご注意。手順は以下の通り。

  1. オケのテンポを得る
    まずは、Melodyneとは無関係に、オケのテンポを調べる。オケを頒布している人が 親切にもテンポを書いてくれていることもあるが、そうでなければ、オケデータから 直接求める方法もある。 我輩は、WaveToneを 使わせてもらっている。読み込ませた上で[解析]→[テンポ解析]すると、「だいたい このへんじゃない?」というのを表示してくれる。テンポ一定の曲ならこれで 困ったことはない(テンポ可変の曲だと後述する別の注意が必要になる)。

  2. Melodyneにテンポを設定する
    Melodyneを起動し、画面最上部中央右のテンポボックスに、さっき得たテンポを 設定する。同時に4/4とか6/8とかの拍子も入力。大事なのは、オケやボーカル音源を Melodyneに読み込むにテンポを設定すること。 そうせず、オケなどを読み込んだ後にテンポ設定すると、オケとテンポの頭出し 部分がズレたり、音源がテンポにあわせて伸張されてしまったりする。 恐らく初心者が一番ハマるのがここなので、安全のために、テンポは先に設定する ことを強くお勧めする。もちろん、[テンポをアサイン]を選択することで、後から (読み込み済みのオケやボーカル音源とは別に)テンポを設定することは可能だが。

    長くなったので、具体的なテンポ設定方法は別に分けた。

  3. オケを読み込んで、アルゴリズム [パーカッシブ] で解析する
    アルゴリズムは [パーカッシブ] 一択。正直ここで解析させるのは、つつくので なければなんでもいいんだけど、 [ユニバーサル]には ノイズがのるという致命的な問題があり、 それ以外は勝手にどうでもいいメロディを検出してしまって使いづらいため。 オケは[パーカッシブ]にしといた方が、後でテンポ区切り確認するのが楽だとか そういう理由もある。

  4. オケを頭出しする
    簡単に言えば、Melodyneでメトロノームを有効にして、その音と合う位置にオケを 移動する。必ずしも1小節目から音が始まる必要はない(が、-1小節目から始まる ように設定したりはしないこと)。我輩はよく2小節目から オケが始まるように設定する。Cubaseで読み込む時に「前に移動」には限りがあって、 空白が必要な場合があるため。それはまぁ好みで。

    オケの拍子は 「谷部分にある」ことに注意。これを知らないと、位置あわせに微妙に 失敗したりする。

各ボーカル音源を読み込む

各ボーカル音源は、アルゴリズム「メロディック」で解析すること。それ以外で 解析してもいいことないので。デフォルトアルゴリズムはメロディック固定で いいと思う。

音程(ピッチ)、タイミングを手作業で調整する

オートクオンタイズ(マクロ)は使わないことをお勧めする。というのは、オートだと 歌い手の「味」まで削ってしまうため。まずはじっくり元ボーカルを聞いて、 ここが味だなー、というところを避けながら、元ボーカルのニュアンスを 変えないように少しずつ直していく。

コツを以下に示したので参照くだされ。

あとは…ハモリパートは、抑揚(同じノート中の音程変化)を少し殺すのがコツかなぁ。 ハモリに抑揚がありすぎると、そっちが目だってしまってメロディが 沈んでしまうので。

我輩は、上の手順で、ボーカルトラックのほぼすべてのノートをひとつづつ調整する。 ボーカルがワントラックだけでも、一曲あたり二時間くらいかかる。 ハモリがあると作業時間さらに倍。合唱モノだと、それだけやり続けても下手すると 三日くらいかかる。 キツいけど、我輩はここでの手間は完成品質に直結していると信じている。

トラックごとに別々に書き出し(エクスポート)

マシンパワーとリソースなどを天秤にかけ、最近では32bit(float)/96kHzで 書き出すのがお勧め。特に音質にこだわりがなければ、32bit(float)/44.1kHzでも 十分だと思う。これはcubaseのプロジェクト設定にあわせる必要があることに 注意。以下のように、16〜32bit(int)よりは32bit(float)の方がいいらしいので、 そこは変えず。

最初は低い周波数で出力してみることをお勧めする。データの周波数が高いと、 Cubaseでの編集時にCPUリソースがモノスゴ必要になるからだ。 我輩は最初24bit/192kHzで書き出してたんだけど、そうするとCore i7 3770Sでも 演奏時は常にCPUは100%利用、エクスポートしようとすると頻繁に 「ファイルの書き出し中に ハードディスク・プロセッサへの負荷が許容量を超えました」になっちゃった ので。音声処理ってそんなに重いものなのかなぁ。

ちなみに、 Melodyneで 192kHzでエキスポートすると、プチプチノイズが入るなんて問題もある。 ご注意。

我輩は、ここでオケもエクスポートし、Cubaseではエクスポートしたオケを使う。 理由は、オケの周波数・ビット長をCubaseにあわせ、万一オケが差し替わっても 対応できるようにするため。

そういう形で、全ての音源をCubaseが直接利用できる形にしておかないと、 Cubaseは自分のプロジェクトフォルダ下に大量のテンポラリな音声ファイルを 吐き出し、それを利用する。そのため、差し替えがうまくできなかったり、 どのファイルが必要でどのファイルが不要なのかわからなくなったりして、 作業効率が悪くなる。

●CubaseでMIX

ここまでで、ボーカルの音程(ピッチ)とタイミングはばっちり合っている はずだ。Cubase上でこれらの調整が不要なので、Cubaseではオケとボーカル とのMIX作業に専念できる。Melodyneを単体で使ってガッツリ調整するのは、 ここまできた時の精神的な安定感を得るためだとも言える。

プロジェクトを設定する

必ず必要なのは、プロジェクトフォルダと周波数・ビット長。 プロジェクトフォルダは、上で設定した 編集/CubaseMix/ ディレクトリに、 周波数・ビット長はMelodyneが吐き出したものに合わせる。この時点で 一度 編集/CubaseMix/曲名.cpr としてセーブしておくとよい。

Melodyneで吐き出したオケ・ボーカルを読み込む

プロジェクトとMelodyneの出力データとで周波数・ビット長をあわせておけば、 何の問題もなく読めるはず。これらが異なると、Cubaseが変換するか、 おかしな状態のまま読み込まれてしまう。変換されたものも使えるが、そうすると 後に元データを差し替えてもCubaseが差し替え後のデータを読んでくれないので、 やっぱりプロジェクトの周波数・ビット長は、Melodyneの出力と あわせたほうがいい。このあたりのCubaseのクセを押さえておくと、差し替えが 楽になる。

読み込み終わったら、テンポ設定と各トラックの頭出しを実施。Melodyneで ばっちりあわせてあれば、そんなに厳密に設定しなくてよい。可変テンポ だったら無視してもいいくらい。

思うさま編集する

ここからはCubaseでのMIXなので、人それぞれやり方があるだろう。 あまり細かくは指定しないし、決まったやり方があるわけではないので 好きにすればいい。

我輩は、ボーカルトラックにはこういう処理をしている、という一例までに。

  1. ボーカルのInsert VSTは、基本的にWaves Q8(Mono)→Waves MV2(Mono)→Waves Deesser(Mono)。レガシーなコンプレッサーは補助的に使う
  2. ビブラート大好きなので、メインボーカルにはvibratoを最初にInsertしてオートメーション書きまくり。詳細
  3. 最後にBlue Cat's Gain Suite(Mono)を Insert し、トラックの音量を微調整する。詳細
  4. ボーカルトラックをまとめた「ボーカルグループ」というグループチャンネルを作り、Reverb/Delayはここから送る
  5. もうちょっとだけ太い音が欲しい!のときは、MagnettoIIかWaves Vitamin Sonic Enhancerを入れる。詳細
  6. ハモリのInsert VSTは、メインボーカルからコピーした後、イコライザは低音少し多く削り、コンプレッサー(or MV2)はより圧縮して抑揚を減らす

注意点としては、コンプレッサーをかけすぎないこと、くらいかなぁ。 かけすぎると音が陳腐になる…。表現するのがスッゴい難しいんだけど、 ぺたっとした平坦な音になるから、原音と聞き比べてみるとよろし。

太い音が欲しいときは音を太くする参照。 既にマスタリング済みのオケを使っている場合は、 マスタリング済みオケを使う時は を参照。

マスタリングする

貧乏マスタリングなら、StudioEQ→MultibandCompressor→Maximizer→UV22。 できればiZotope Ozone7などを導入した方がいい。音圧を上げたいなら、 MaximizerかLimitterでthresholdをぎゅーっ下げればいい。でも あんま音圧競争には関わらない方が吉。少々音が小さくっても別にいいじゃん、と 我輩は思うのであるが。

マスタリング済みのオケを使っている場合は、ここであげられる音圧は 多くても〜2db程度。それ以上上げると音が顕著にゆがんでしまうので 注意。だから、ボーカルだけその前に「ボーカルグループ」で音圧を上げて おく必要があるわけだ。

調整をやりなおす

ここからは耐久レース。何度も何度も出来上がった音を聞き、ちょっとでも おかしいなと思った部分を少しずつ修正していく。

ここでどんだけがんばるかが、最終的な品質に大きく関わる。 聞け!そして修正せよ!(「生きよ、そして記憶せよ」の節で)。

■終わりに

駆け足で説明してきたけどどんなもんだろうか。ちったぁお役に立ったろうか。 というか今のところ我輩自身の備忘録なんで、皆様の役に立たなくてもいいといえば いいんだけれどナ!

明らかな間違いがあったら指摘してもらえると喜びます(我輩が)。